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中毒依存

 いつの間にか、僕は君に夢中になっている。愛しているとか、愛していないとか、そんな言葉はよく分からない。鳴り止まない電話に、100通を超えるLINE。夜も眠らず、メッセージを送る。君は、僕が必要だという。死にたい、助けて。君の声は、いつも僕だけに届いた。

 周りはおかしい、やめた方がいいという。会社に遅刻することも多くなったし、ミスも増えた。上司は、いつも僕のことを叱責する。役立たずだと、僕を馬鹿にする。

 彼女と僕との立場は、いつの間にか逆転した。気がつくと、僕はトイレに篭って、彼女にLINEする。

ーまた、怒られたよ。

 彼女だけが僕の味方だ。僕は、彼女だけいればそれでいい。仲が良かった友人とも、もう随分、会っていない。なぜだろう、周りは、彼女と付き合ってから僕が変わったと言う。そんなことない。

 ただ、彼女といることが、僕の全てになった。仕事中も、彼女からの電話は鳴り止まない。彼女も会社で嫌なことがあったのかもしれない。僕も彼女も、同じなんだ。辛い。僕らは何も悪いことをしていない。どうして、二人は不幸なのか。おかしいのは周りの方だ。

 いつの間にか、仕事もうまくいかなくなった。大丈夫、僕には彼女がいる。彼女の勧めで、仕事ももうすぐ辞めるつもりだ。最近、クマがひどくなったと言われる。会社のせいだ。僕はそう思っている。

 ほら、また、彼女からだ。早くLINEを返さないと。彼女との約束だから。僕は、彼女と一心同体。僕の理解者は彼女しかいない。

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