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小鳥のさえずりを聞いたのは、いつぶりなのか。いや、きっと毎日、あの鳥は鳴いていたのだろう…
鐘が鳴る。街ではイルミネーションがきらめいていた。凍える手には力が入らない。見上げると…
「いつになったら降りてくるんだ」 階段の下から、義兄の声がした。僕は、ろくに返事もせず…
曲がったことが嫌いで、まっすぐな彼女はいつも一人だった。教室の片隅に、一人ぼっちの彼女…
落ち込んだ未来を想像した。思い通りの日常なんて手に入らない。 私はいつも、思い通りで…
白い吐息は、美しい。凍える手をポケットにしまい、立ち寄ったカフェには、まだお客はいなか…
離れたのは君のせい。 放したのは僕のせい。 僕と君は似た者同士。 笑ったり泣いたり、ほら、もうすぐバスが来る。 「じゃあね」と手を振る君は、晴れ晴れとした顔をして乗り込んだ。 さよならってこんなに辛いものなのか。 僕と君は似た者同士。 バスの窓から遠くを見つめる君の瞳は、きっと涙で濡れている。
追いかけることをしなかった僕は、二人の終わりを予感していた。青信号になった瞬間、目も合…
ふーっと息を吹きかける。タンポポの綿毛は、空を舞い、ゆっくりと風に乗って飛び立った。こ…
地面に叩きつけられたその光は、パチパチと音を立てて消えていった。まるで二人の終わりを知…
もうすぐあの季節が来る。波が僕の足を濡らしていく。 ーほらほら、迎えに来たよ。 …
「何をそんなに焦っているのか」 僕は、事務所を飛び出した透子を呼び止めた。 「そんなこと…
物作りに興味を持ったのは、小学生の頃だ。15歳も離れた姉が、妊娠をきっかけにハンドメイド…
「春は、出会いの季節だと思う?」 「え?」 「それとも、別れの季節だと思う?」 春子さんは、僕をからかうように言った。職場の窓からは、風とともに桜がゆらゆらと散っていくのが見えた。 「私は、出会いの季節だって思ってる」 春子さんの瞳は、何かを決心したようだった。次の日、春子さんは、職場から姿を消した。 * 「からかわれてただけよ」 春子さんがいなくなって2週間が経った。必死に探し回る僕に、職場の人は皆、呆れたようにそう言った。7つも年下の僕は、春子さんからみたら、き