マガジンのカバー画像

117
noteのお題やコンテスト応募用等で書いた作品集。色んな物語がつまっています。
運営しているクリエイター

2022年3月の記事一覧

赤いハイヒールの女

 女はやけに堂々としていた。こういったタイプは、ちと脅した所でビクともしない。楠ケ谷修治…

23

堕ちていく

 二極化。搾取される方と搾取する方。僕は、搾取する方になりたくて、気がつくと夜の街へ落ち…

21

二人言

 消えたい。そう思っていたわけじゃない。ただ、まっすぐ家に帰ることができなかった。終電に…

30

悲劇のヒロイン

うん、違うの。 今回は、今までと違うの。 だって、うん、ごめん、私、でも涙が。 うん、泣か…

26

三角形の角を切ル

 自分の立ち位置くらい、分かっている。ヒエラルキーの下の方。しがみつくのに必死で、私の手…

15

逃げる

 転がった缶ビールを先に拾うべきなのだろうか。目の前には、中年の男がうつ伏せに倒れている…

21

中毒依存

 いつの間にか、僕は君に夢中になっている。愛しているとか、愛していないとか、そんな言葉はよく分からない。鳴り止まない電話に、100通を超えるLINE。夜も眠らず、メッセージを送る。君は、僕が必要だという。死にたい、助けて。君の声は、いつも僕だけに届いた。  周りはおかしい、やめた方がいいという。会社に遅刻することも多くなったし、ミスも増えた。上司は、いつも僕のことを叱責する。役立たずだと、僕を馬鹿にする。  彼女と僕との立場は、いつの間にか逆転した。気がつくと、僕はトイレ

多分、誰にも響かない

「いるんだよねー、そうやって勘違いしちゃうやつ」  男は見向きもせずに、パソコンと向き合…

26

ピーターパンには気をつけて

 僕は空を飛ぶことができる。そんなことを言って笑われていたのは、小学生の頃だ。  嘘じゃ…

68

電磁波

―僕、怖いんです。 「怖い?」 ―僕の中に、何か得体のしれないものがいるような気がして。…

14

酷白

 私は、嘘をついた汚い人間です。 この罪は消えないことを知っています。  どうして笑うの…

18

アイスが溶けるまで

 ここだけは安全だと、そう思った。 「おいしいなぁ」  流れてくる涙をただ拭い、私は一口…

22

嫉妬

もしもし、あぁ、久しぶり。 こっちは元気よ。うん、楽しくやってる。 色んな人がね、親切にし…

18

秘密

 繋いだあの手のぬくもりが、今にも全身を駆け巡っていくようだった。 「よかった。探したんよ。大変なことになった。幹恵さんがな」  藤木のおっちゃんは、僕の肩に手を置いて言った。 「あの崖から足滑らせたようで、亡くなったんよ」  浜辺には、警察車両のライトがいくつも重なり、人だかりができていた。  ブルーシートに覆われた遺体の横には、泣き叫ぶ杏奈がいる。 「よりにもよって。こんなところで死なんでもいいのに。この町の恥さらしが」  心無い声が、聞こえた。 「杏奈お姉ちゃ