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『十二人の手紙』井上ひさし 感想

こんにちは。RIYOです。
今回はこちらの作品です。

キャバレーのホステスになった修道女の身も心もボロボロの手紙、上京して主人の毒牙にかかった家出少女が弟に送る手紙など、手紙だけが物語る笑いと哀しみがいっぱいの人生ドラマ。
紹介文より

劇作家としての始まりは、ストリップショーの幕間劇台本からでした。1969年、戯曲『日本人のへそ』で日本演劇界にデビュー。1972年、戯曲『道元の冒険』で岸田戯曲賞と芸術選奨新人賞を受賞。小説『手鎖心中』で直木賞を受賞。そして1984年に自身の書き上げた戯曲のみ上演をする「劇団こまつ座」が誕生します。
この長く怒涛の道のりで生まれた戯曲や小説は、日本文学界では貴重な魂として、日本演劇界では今も輝く光として、現在でも愛され続けています。

出生届、死亡届、洗礼証明書など公的文書のみで構成された「赤い手」、戯曲で構成され、最後にニヤリとしてしまう「葬送歌」、大変なバイオレンスでいながら最後にしてやられる「鍵」、行き場の無い苦悩が読後も残る「里親」など。
キリが無いほど賞賛し続けたい一冊です。これほど緻密で読者を魅了できる作家はなかなか居ないと思います。解説で扇田昭彦さんがこう書いてました。

劇作家として、演技する人間の種々相を活写しつづけている井上ひさし氏が、人間の演技性の表現に最適のこの書簡体形式を小説に採り入れたのは、いかにも納得できることだ。
扇田昭彦 解説

活写する側の目線、つまりあるメタ視点で演技・もしくは演者を見た場合文章で表現するのに、何が適しているかを考えた結果がこの形式だったわけです。それは見事に体言化され、一頁ごとに書での演技を見せつけられるのです。

この作品を読むとレーモン・クノー『文体練習』を思い浮かべます。作り手が伝えたい空気や重みや含みを、どういった文体で表現するのが最適か考え抜かれた文章構成になっています。見事としか言いようがないこの作品、未読の方はぜひ読んでみてください。
また、彼の戯曲に興味を持たれましたら「戯曲デジタルアーカイブ」より『組曲虐殺』という作品を読むことが出来ますので、よろしければ。
では。


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