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『星界の報告』ガリレオ・ガリレイ 感想

こんにちは。RIYOです。
今回の作品はこちらです。

1610年冬、ガリレオ(1564-1642)はみずからの手で完成した望遠鏡を通して、30倍に拡大された星界に初めて対面する。まず月面・銀河・星雲、そしてそれまで未知であった木星の周囲を回転する4つの衛星。精緻な観察が卓抜な想像力と結びつき、世界をゆるがせた推論は仮借なく押し進められる。「太陽黒点にかんする第二書簡」を併収。
紹介文より

「近代科学の父」或いは「天文学の父」と呼ばれる天才、イタリアの物理学者で哲学者のガリレオ・ガリレイ。その人生に大きな影響を及ぼした『星界の報告』です。
ガリレオが活躍したこの時代は「三十年戦争」(カトリックとプロテスタントの戦い)の最中で、宗教的な思想は非常に神経質になっていた時代と言えます。イタリアも国内で分裂し、中世の終わりを迎えようとしていました。
当時はアリストテレス、プトレマイオスが構築した「天動説」が、キリスト教において世界の真理であり、不変とされていました。

主がアモリ人をイスラエルの人々に渡された日、ヨシュアはイスラエルの人々の見ている前で主をたたえて言った。
「日よとどまれギブオンの上に、月よとどまれアヤロンの谷に。」
日はとどまり、月は動きをやめた。民が敵を打ち破るまで。
『ヤシャルの書』にこう記されているように、日はまる一日、中天にとどまり、急いで傾こうとしなかった。
旧約聖書:ヨシュア記(第10章12-13節)

『旧約聖書』のヨシュア記にあるように、ヨシュアの祈りが「動いていた太陽と月の動きをとどめた」ことが記されています。これが根拠となり太陽と月は動いていた、つまり「天動説」が絶対であったのです。

ガリレオは、オランダの眼鏡技師が発明した望遠鏡を元に「天体観測が可能」なまでに改良し、星界を観察し始めます。そこで数々の重大な事実を発見します。「月にクレーターが存在する」「星は太陽光に照らされて満ち欠けする」「木星には4つの衛星が存在する」「太陽の黒点は太陽表面に存在し自転を表している」など。これらの発見を観測結果を元に報告したのが、本書『星界の報告』です。

報告先は当時のトスカナ大公、メディチ家です。このコジモ二世殿下に上記の「木星の4つの衛星」を捧げ、「メディチ星」と命名します。この功労が影響し、ガリレオはフィレンツェにて「大公付きの学者」として厚遇されます。
これを僻み、快く思わない学者たちは、教会の聖職者たちをそそのかし、「天動説を否定する異端者」として宗教裁判にかけることにしたのです。これによりガリレオが説いた推論を取り下げること、そして今後説かないこと、を約束させられました。しかしガリレオは自身の研究を続け『天文対話』という天動説学者と地動説学者の対話式の論証を出版します。
イエズス会はこの行動に対し、裁判で下された決定を破っているとして、再度の宗教裁判をかけます。そして有罪による軟禁刑のまま、この世を去りました。

1979年、ローマ教皇ヨハネ=パウロ2世が、アインシュタイン生誕100年祭において「ガリレオの偉大さはすべての人の知るところ」という講演を行いました。これをきっかけに、ガリレオ裁判の判決が見直され、1983年に無罪を表明し、ガリレオに謝罪しました。

本書の内容に関しては、現在となっては科学者でなくとも常識とされている「当たり前の内容」ですが、科学と推論で真実を構築しようとする熱意が、文章の熱量に込められています。そしてガリレオの攻撃的で、根拠を持った論説は清々しくもあり、危なげでもあり、「報告」でありながら文学としても楽しく読むことができる作品です。

偉大な科学者の人生と、世界の真理に大きく影響を与えた『星界の報告』は、ぜひ手にとって読んでいただきたいです。
では。


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