青宙の鳥 【短編小説】
青い鳥がいた。
輝かんばかりの赤を持つ鳥がいた。
その2羽の鳥からたまごが、
たまごから1羽の小鳥が産まれた。
さてこの子は赤の鳥を見たことがない。
産まれたころに死んでしまったのか、子を見捨てたのかは分からないが赤の鳥は消えてしまった。
赤ちゃんの鳥は青い鳥に育てられた。
赤ちゃんの鳥はすくすくと成長して、親鳥の大きさを軽く超えるほどに成長した。羽の色は輝かんばかりの水色だった。
鳥の子は自分が他の鳥と違うのに気づいていた。親鳥とも
自分はどんな鳥より高く飛べた。
自分はどんな鳥より速く飛べた。
鳥の子は自分の餌ばかりではなく親の餌のぶんも獲れるほどになっていた。
羽の色は輝かんばかりの青色になった。
鳥の子は大人になった。
鳥の子は自分が普通ではないことに気づいた。
自分は想像だにしないほど高く飛べた。
自分は想像だにしないほど速く飛べた。
自分は想像だにしないほど眼が良かった。
鳥の子は鳥のことを助けた。ありとあらゆる鳥を助けられるだけの力を持っている。ありとあらゆる鳥の不幸を見える眼を持っていた。
羽の色は深く闇に溶け込むような藍色になった。
鳥は宇宙にいた。
鳥は宇宙と呼べるところまで高く飛んだ。
鳥は光と呼べるほど速く飛んだ。
鳥は不幸が見える眼を持った。
鳥は動かなかった。
羽の色は炭のような黒色をしていた。
鳥は闇の中にいた。
鳥は幸福が見えないほど高く飛べた。
鳥は未来が来ないほど速く飛べた。
鳥は何も見ない。
鳥の羽の先が白く光はじめた。
輝かんばかりの炎が鳥を包む。
羽の色は赤色になった。
しかしそれを知るものはいない。
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