『気象インフラを創る!』tenki.jp池田さん・森島さん 〜第50回記念モトヤフインタビュー〜
今回のモトヤフインタビューは、第50回という記念すべき回になりました。
いつもはインタビューのお相手はおひとりなのですが、今回は年間58億PVを有する天気予報専門メディア『tenki.jp』を運営する株式会社ALiNKインターネットの代表取締役CEOの池田洋人(いけだ ひろと)さんと、同社サービス統括部部長の森島昌洋(もりしま まさひろ)さんの、おふたりのモトヤフに同時インタビューをさせていただきました。
※トップ画像の右が池田さん、左が森島さん
※※本文では池田さんは池、森島さんは森で表記させていただきました。
※※※ モトヤフ:元ヤフー社員
-本日はよろしくお願いいたします。あらためて、それぞれお名前とご年齢をお願いいたします。
池:池田と申します。ALiNKインターネットの代表を務めております。48才です。
森:森島と申します。昨年よりALiNKにジョインしました。同じモトヤフですが、入社してからはじめて、池田さんもモトヤフだと知りました。私は2つ下の46才です。
-お生まれや現在のお住まいについてもお二人にお聞きします。
池:私は埼玉県で生まれ、その後東京に転居し長く暮らしていましたが、現在は再び実家のある埼玉県に戻っています。
森:私は岐阜県出身ですが、その後学生時代からヤフー入社までの社会人の時代は神戸に住んでいました。ヤフー入社とともに東京に来て、ヒルズで働くのか!と少しオトナになった気分でした(笑)。
-続いて、お二人のこれまでのプロフィールをお聞かせ下さい。
池:最初に勤務したのは、ハレックスという民間気象会社でした。こちらの会社はNTTデータと日本気象協会を中心に、多くの企業が株主として出資しているジョイント企業になります。その後、同じ民間気象情報会社であるウェザーラインに転職しました。
大学卒業時には営業職や企画職を志望していました。就職氷河期のど真ん中でしたが、そのなかでハレックスという、気象庁以外にも気象ビジネスを展開している会社の存在を知り、応募したのです。入社試験の作文では、他の応募者が当然書いている「文字」ではなく、思い切って「雲を突き抜けるジャックの豆の木」の絵を描きました。それがユニークと評価されたのか、運良く高い競争倍率をかいくぐり、プロパー社員1期生3名の1人として入社することができました。入社後は1994年に創設された『気象予報士』の資格にもチャレンジし、無事取得しました。
ところが、26歳のとき椎間板ヘルニアとなり(高校時代に野球で腰を痛めたことが遠因)、医者からは2年間しっかり治療に専念するように言わました。
結果的にハレックスを退職し、医者の診断どおり治療に2年を費やすこととなりましたが、この療養中、ネットビジネスを学ぶため、気象予報士を応援するホームページを制作しました。そのサイトを舞台に、UI/UX、マネタイズといったメディア事業の基礎を独学で習得することができました。
その後体調も全快し、再就職したのが同じく民間気象会社のウェザーラインでした。この会社での私のミッションは、企画営業職として気象の活用方法をプランニングして、気象データを活用してもらうことだったのですが、しつこく営業をかけていた先がYahoo!天気でして、その時はサービスを抜本的に改革する提案を行っていました。
しかしウェザーライン自体が経営不振に陥ったこともあり、いっそ中に入って自分がサービスを立ち上げてみようと思い、2003年にヤフーに入社しました。そして、今のYahoo!天気の原型を立ち上げるミッションを実行しました。
ヤフーでのサービス立ち上げを節目に、次のステップとして起業を考え、退職してALiNKインターネットを創業しました。起業のきっかけは、日本気象協会と業務契約を交わす機会があった際、個人事業主ではなく法人契約を要請されたことから、当初父が経営する「ありんく」という会社に所属することで契約し、後日改めて今のALiNKインターネットを創業したという経緯になります。
森:私は2004年にヤフーに入社、2012年まで在籍していました。
学生時代に、ホームページを作るフリーランスをやっていましたが、その後大学を中退して、ホテル予約サービスを運営するベストリザーブという会社に入りました。
もともとネットビジネスでキャリアを積んでいきたいと考えていたのですが、28才のときに「この世界で勝負するなら、ナンバーワン企業であるヤフーに入りたい」と思い、採用ページを見て応募、当時リスティング事業部長だった志立さんの面接で採用してもらいました。
その後は地域系を中心に、さまざまなサービスへ企画職として関わりました。なかでもYahoo!グルメでの新事業立ち上げ(出前)、Yahoo!ウェディングの事業モデル変更、Yahoo!モバイルへのローカル検索追加など、サービスのゼロイチを企画推進する機会に恵まれたことが、いまの自分の根っこになったのだと感じています。
ヤフー退職後は、ぐるなび、KADOKAWA、オズビジョンを経てALiNKに2022年2月入社、現在は当社の主力事業である『tenki.jp』の事業責任者を務めています。池田さんとは同じモトヤフですが、それはまったくの偶然で、ヤフーつながりで入社したわけではないのです。もっとも池田さんとの間では、マネジメントの話題になったときに「今回はイレギュラー承認で」とか「ミニ経やろうか」などという、当時の”ヤフーワード”で意思疎通を図ることもあります。私の部門も『サービス統括部』という名称です(笑)。
-お二人がそれぞれ在籍されていた当時の周りの方々の特徴というものがありましたでしょうか?
池:敢えてヤフーの社員を入社で世代分けすると、自分は第二世代だと思うんです。草創期のヤフーの礎を作った第一世代に続く第二世代は、それぞれ別な業界からヤフーにジョインして、ヤフーで何かやってやろうという人が多かったと思います。特に私が所属していた当時のメディア事業部には、トピックスであれば奥村さん、ミュージックであれば水野さんといった、専門分野の経験と実績を保有したエッジの立った方々が在籍していた印象があり、自分もその中で天気を独立したプロパティとしてなんとかしたいという思いを強く持ちました。
-ヤフーで学んだことや辞めたから分かるヤフーの良さというものがあったら教えて下さい。
池:ヤフーの文化として、やりたい人が手を挙げることで新しいことをやらせてもらえる、という組織風土がありました。ただ逆説的ですが、実のところすぐにやらせてもらえるわけではなく、提案者が信念に基づいて提案内容を練り、ダメ出しを繰り返しながら企画精度を高めていくことで、やっと実現できることが多かった印象があります。当時は影山さんを説得できるかが大きな関門でした(笑)。
Yahoo!天気をフルリニューアルするにあたり、収益増のためひとつの戦術として、クリックできないネイティブ広告を商品企画の担当者と一緒に作りました。今でこそネイティブ広告は一般化していますが、当時はバナー面積をできるだけ広く確保して露出させることが主流でしたので、社内の各方面から、商品への理解を得るのに苦労しました。
実は今もtenki.jpで同様の商材を販売していまして、売れ筋となっています。直近ですと、ファーストリテイリングさんにご出稿いただいた『ヒートテック指数』や『エアリズム指数』のように気象に関連した指数情報と連動したかたちの広告の引き合いが多いですね。
森:モバイル検索の立ち上げ時、ぐるなびさんとリクルートさん(ホットペッパー)のクーポンを導入したことが強く印象に残っています。Yahoo!グルメのプロデューサーや営業担当と何度か激論を交わしたのですが、最終的には「競合のコンテンツでも、必要なら入れよう」となりました。自社の利益だけでなく、ユーザーにとって最善の価値提供を行うことを是とする文化がありましたね。
また、3.11東日本大震災が発生したときには、地域系メンバーとして対策プロジェクトチームに入り、被災地での避難所情報提供など、被災者が本当に必要としている情報発信に不眠不休で関わりました。これは、メディアパーソンとしての価値観を大きく変える経験でした。いま気象を扱うメディアの責任者を務めていますが、もし不幸にも災害が起きてしまったときには、このときの判断や経験を拠り所にするだろう、と思います。
池:災害が起きたときに、「ネットが繋がらない」という状態をまずは回避するのがメディアの重要な使命だという認識は、ヤフーのメディア事業部在籍中に、心身にしみついた気がします。
気象メディアは防災情報を広汎に扱いますが、特に地震は台風などと比べ事前予測が難しく、トラフィックが前触れなく垂直に立ち上がる性質があります。そのため、最新の情報を快適な環境で提供するための運用がとても重要です。私がヤフーで手がけた最後の仕事もこれに関連しています。ヤフー全てのページに災害情報(地震や津波)を表示させる「EMGタグ」を導入するプロジェクトでした。
これは川邊さんたちと一緒に全社横断プロジェクトとして立ち上げたもので、この仕組みを評価をいただき、四半期毎に発表されるスーパースターという賞を受賞させていただきました。
社歴の短い私のような立場の社員にも、こうした重要ミッションを任せてくれる文化は、辞めてから再認識するヤフーの良さだと思います。
森:そういえば池田さんとはヤフーで1年くらい在籍期間が重なっているのですが、EMGタグのときは私も事業側で対応していたことを思い出しました。全社最優先案件でしたね。
-ネクストキャリアを選んだ決め手は何ですか?
池:今だから言えるのですが、実は当初から、ヤフーの在籍期間は数年間と心に決めて入社してました。時限にすることで、背水の陣の覚悟でやりたいことを必ずやりきろうと思っていました。
ネクストキャリアは、やりきった経験があればどうにでもなるんじゃないかと(笑)。
森:ヤフーではさまざまなサービスに関わる中で大いに成長もできたのですが、もう少し規模の小さい会社で、言い換えれば自分の行動や判断が大きくサービスを左右できる環境で、自分の力を試してみようと思いヤフーを卒業しました。
-現在のお仕事は具体的にどんな内容でしょうか?
池:会社の代表をしていることもあり、起業当初は、「エースで四番」の気概で全試合フル出場してたと思います。サービス企画、デザイン設計、広告商品企画、営業、カスタマーサポート等、プログラミング以外はなんでもやりました。
現在は信頼できる優秀なメンバーに支えられ、一歩下がった「監督」という思いで日々奮闘しています。
森:先ほど申し上げたとおり、当社の主力事業である「tenki.jp」のALiNK側責任者を務めています。事業戦略からUIチェックに至るまで、まさにヤフー勤務当時の企画職と同じく、なんでもやっています。
-コロナでお仕事への影響等はありましたか。
池:サービス的には外出自粛の影響で、天気予報への接触頻度が減ったため、一時的にアクセスが減少した時期がありました。今はお出かけ需要の復活につれ、回復しています。
コロナ禍3年間の勤務体制は、基本全社員フルリモートとしました。しかし今年度から、原則週2日出社で残り3日がリモートというハイブリッド体制に変更しています。
-それぞれ現在の会社でのエピソードがあればお願いいたします。
池:東日本大震災のとき、あるユーザーさんから「大変です!朝起きたらベランダに黄色い放射能が積もっています。払ってもよいのでしょうか?」という問い合わせがありました。「おそらく、時期と場所から、それは花粉ではないでしょうか」と回答しました。これは笑い話ではないんです。確かに放射能は黄色いイメージもありますが、当時はそのくらい社会全体が混乱していたわけです。こうした命に関わるような問い合わせをいただけることは、メディアに携わる者として、あらためて身が引き締まる思いを感じました。
森:tenki.jpは日本有数のトラフィックを誇るサービスですが、ALiNKは20数名の少数精鋭なので、自分の思いや企画をダイレクトにサービスへ反映できるダイナミックさが醍醐味ですね。もちろん大企業のようにリソースや仕組みがすべて整っているわけではないですが、20年近くむかしのヤフー企画時代を思い出せば、わりとなんでも平気です(笑)。
-現在、お二人がプライベートで特に力を入れていることは何ですか?
池:シーズンで月1ぐらいのペースですが、1年程前からゴルフをはじめました。迷惑がかからない程度に回れるようになりつつあるので、ぜひお誘いいただけたらうれしいです!
森:仕事はもちろんですが、プライベートではサウナにハマっています。最高のリセット&セルフケアですね。
-ご家族以外で尊敬している方がおられたら教えて下さい。
池:この質問をいただくときにいつも3人のお名前を出させてもらっています。1人目はハレックス当時の上司だった坂本さん。当時坂本さんは30歳前後だったと思うのですが、自分があの年齢になったときにあんな風に仕事を仕切れるようになりたいと憧れでした。
2人目はウェザーラインの高塚社長。独創的なアイデアと行動力がハンパなかった。
3人目はヤフー当時の直属上司だった宮坂さん。迷ったときの見極めの嗅覚がとても鋭くて、どんだけハングリーなんだろうって思ってました。
森:ずっとオーナーシップの強い会社ばかりで働いてきましたが、折々に見たトップの方々の考え方には強い影響を受けています。ALiNKもそうですが、やはりオーナー社長は独特の感性と価値観を持っているので、身近で働くことそのものが学びにつながっています。
-ご趣味は何ですか?
池:旅行です。昔バックパッカーをやっていたこともあって、観光地を回るのも好きですが、スケジュールを作らず旅をするようなスタンスが本当は好みです。家族がいるとなかなか難しいですが。
森:私も、実は旅行です。さらに奇遇ですが、元バックパッカーでもあります。気候や地理が密接にかかわる趣味なので、tenki.jpは天職かもしれません。
-ライフワークとしてチャレンジしたいことを教えてください。
池:気象インフラを創る!
森:自分の力で事業を大きくしたい。ALiNKの知名度はまだ決して高くないのですが、近いうちに「あー、ALiNKね」と言ってもらえるような事業展開をしていきたいです。
-イマヤフに伝えたいメッセージをお願いします。
池:モトヤフが一種のブランドのようになっている、と感じる機会がときどきあります。間違いなくイマヤフの皆さんのお陰です。
森:ヤフーで学べることはたくさんあると思います。仕事の幅の広さだけでなく、メディアとしての公共性を学ぶ機会を大切にしていただきたいです。
-モトヤフに伝えたいメッセージをお願いします。
池:雨が降ったら当社を思い出してください!お仕事ご一緒できたら嬉しいです。
森:モトヤフ同士でお仕事をすることも増えました。天気関連で何かあれば、いつでもご相談ください!
-池田さん森島さん、本日は大変ありがとうございました!
(本日のインタビューは川村英樹が担当しました)
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