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不特定多数の意思によって収録されていく楽曲群、という実験について

「この世に存在しない音楽」
この言葉を聞いて心が弾むのを感じたならば、貴方はこの作品の中に一歩踏み込んだと言える。壁面に掲げられた正方形の画像群、それはこの世には存在しない非実在のジャケットである。そんなアーティストは存在しない。そんなアルバムは存在しない。そしてもちろんジャケットの中にレコード盤は存在しない。しかし、それら非実在ジャケットをじっと見つめてみてほしい。きっと貴方の頭の中でぼんやりと音楽性やジャンルが想像されたのではないだろうか。視覚的な情報から聴覚的な連想を行うこの現象を、私は「音楽(ミュージック)」+「連想」=「ミューレンソウ」と名付けた。本作品は不特定多数の鑑賞者が発生させた「ミューレンソウ」によって変化し、流動し、完成する。是非力を貸していただきたい。「ただの正方形の画像群」は貴方達の「ミューレンソウ」によって実在性を獲得していく。そしてこの空間には、「空気を振動させない音楽」が流れ始めるのだ。

この文章は現在開催されている「これはゲームなのか展 #2」に出展した作品『虚構の名盤 或いはアナザー・ミューレンソウ』のために書いたキャプションです。
パッケージ商品として発売したボードゲーム『ミューレンソウ』の制作過程であまりにハードルが高くなりすぎてしまったためボツにした案を、不特定多数(つまり来場者)が参加する形に改変し、改題した作品として出展されています。「アートとゲームの境界をゲーム側から探る」という企画展のコンセプトを鑑み、鑑賞するだけでも想像が膨らみ、かつその作品の変化に介入できるという内容を目指しました。

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簡単に言うとこういうゲーム(なのか?)。

■壁面にはレコードアルバムのジャケットが10枚飾られているが当然そんなアルバムはこの世に存在しない
■参加者は山札の一番上から1枚カードを取る。そこには「どこかの誰か」が書き残していった曲名が書かれている
■参加者は取ったカードを適切だと思った場所に置く。入れ替えることもできる
■参加者は白紙に曲名を書き、山札の一番下に残していく

開催初日である12月7日(土)は、カードの置き方の例として最初に配置していた2枚以外は空白状態から始まったのですが、終了時間にはほぼ全てが埋まりました。まだ初日にもかかわらず、自分が想定していた以上に「それっぽい」収録曲が出来上がっており、これをあと1週間続けた時にどれほど洗練されていくのか楽しみでなりません。貴方が書いた曲名は最終日の最後の瞬間まで壁面に残っているかもしれません。全員が「選別する側」と「選別される側」を味わい、不特定多数の「ミューレンソウ」が虚構のアルバムを名盤へと導く、この作品。ぜひ「これはゲームなのか?展#2」にて不思議な感覚を味わってみてください。会期は12月15日(日)まで。開場は秋葉原・末広町駅から徒歩圏内のアーツ千代田3331です。

一枚だけ途中段階をご紹介。初日終了時点でのとあるアルバム。(最終日まで変化し続けます)

画像2


『さよなら空中団地』/イータブル・フライパン
-Side A-
01. 浮く
02. 空中庭園 vol.8
03. 君が今一緒に歩いてるのは、僕の母さん
04. 今日はお散歩日和
05. Education Is Death.
06. ワ
-Side B-
01. ダンチライオン
02. 青天の霹靂
03. SUPERIOR TOWN
04. 埼玉県和光市
05. Wedding
06. UUUUUP!!

な、なんだこの「ありそうすぎる」アルバムは…。完成が楽しみすぎるでしかし。

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