Ritsuko Kawai
ビジュアルメモリーズ 第7話「胸躍る北の聖地へスキップ」
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ビジュアルメモリーズ 第7話「胸躍る北の聖地へスキップ」

Ritsuko Kawai

忘れもしない1999年12月下旬。まだ10代前半だった私は人生で初めて体験したギャルゲーの舞台にすっかり魅了され、日本海の波を切るフェリーの甲板でまだ見ぬ北の大地へと続く水平線を眺めながら、冬の海風に頬を赤らめていた。

ロールモデルはギャルゲのヒロイン

すべての始まりは、ドリームキャスト発売当初から毎月購読していた雑誌ドリマガの特集で、たまたま『北へ。』を目にしたこと。幼いころからヒゲとマッチョとゾンビが大好きだった私にとって、それまでギャルゲーなど一切興味の対象にならなかった。

そんな私の幼心を鷲掴みにしたのが、本作の最年長ヒロインにして大学病院で働く研修医「椎名薫」というキャラクターだった。こんな大人の女性になりたい。ふとそう感じた。何よりも中の人がハマーン様(Z・ZZガンダムに登場するミンキーモモ似の人、キュベレイのパイロット)だったことが大きい。

いざプレイしてみれば何てことはない。捻れば千切れる棒きれみたいな手足の生えたお人形さんたちは、月並みのイケメン台詞を繰り返すだけで面白いように顔も見えない主人公の毒牙にかかる。

しかし、薫さんだけは違った。主人公より7歳も年上の成人女性。高校生のナンパなんてビクともしない。それでいてひょんなことから自分の身代わりになった彼にちらちら見せ始めるメスの香り。コイツはできる。こういう大人になりたい。私はそう思った。

もちろんほかにも、空自勤務なのに何故か陸自の制服を着ているボーイッシュ美人や、怪我もしていないのにいつも眼帯をした高二病全開のちょい悪ギャル、ウザいからシバいたら毎晩無言電話をかけてくる面倒くさいオタクストーカー女など、癖の強いヒロインはいくらでもいたが、ハマーン様の声でしゃべる白衣の魅力には到底敵わない。

そういうわけで薫さんをロールモデルにしようとプレイし始めたギャルゲー。しかし、ゲームを進める中で私をもっとも魅了したのは、ほかでもない観光促進ツールとしての本作があからさま過ぎるほどに紹介してくれる北海道という舞台そのものだった。

たったひとりの修学旅行は聖地巡礼

口にしたことない地域食材や郷土料理はもちろん、赤レンガに刻まれた歴史の面影や、写真からでも香りが伝わってきそうなラベンダー畑、夜空を切り裂いて星の光をばらまいたように輝く函館山の夜景。中でも小樽運河がお気に入りだった。ゲーム中ではロシア人ヒロイン「ターニャ・リピンスキー」の職場として登場した小樽運河工芸館のガラス細工に心を奪われた。

『北へ。』には、観光地の情報にアクセスするためのURLや電話番号をビジュアルメモリに記録して持ち歩けるという機能があったことも、私の冒険欲を刺激する要因だった。

ちょうど諸事情(タイタンと呼ばれた女 第2話で、当時の私が学校に通えなくなった背景を語っている)で私だけ学校の修学旅行に参加できなかったことも理由の一つだ。せっかくなら『北へ。』のメインイベント「ホワイト・イルミネーション」が催される年越しを聖地で過ごしたい。

さっそく理想の一人旅を計画した私は、北海道の現地情報やうんちくを手当たり次第小さな頭に詰め込んだ。ゲーム内のアーケードで遊べるミニゲーム「クイズまるごと北海道」はもちろん満点。我が家の北海道博士になっていた私の決意に、最初は心配していた両親も反対することはなかった。

ちなみに移動に海路を選んだ理由は、セガサターンの名作RPG『グランディア』のジャスティンみたいで格好いいと思ったから。かくして私はカニがいっぱいホタテいっぱいの胸躍る北の聖地へスキップした。

まだ携帯電話もデジタルカメラもいまほど普及していなかった時代。月刊少年ガンガンの応募者全員サービスで手に入れたお気に入りのテレフォンカードと、最近では古代文明の遺物と化した使い捨てのインスタントカメラを2個だけ携えて、札幌・小樽・函館を中心にゲームの舞台を可能な限り網羅した聖地巡礼の始まりである。

旅は道連れ。友達は現地調達。次回は、『北へ。』の主人公と同様に北海道の大地で素敵な出会いを果たしたストーリーを交えつつ、ミレニアムを迎える時代の変遷に触れていきたい。

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Ritsuko Kawai
ライター・ジャーナリスト。カナダで青春時代を過ごし、現地の大学で応用数学を専攻。帰国後は塾講師やホステスなど様々な職業を経て、ゲームメディアの編集者を経験。その後、独立して業界やジャンルを問わずフリーランスとして活動。趣味は料理とPCゲーム。ストラテジーゲームとコーヒーが大好き。