Ritsuko Kawai

ライター・ジャーナリスト。カナダで青春時代を過ごし、現地の大学で応用数学を専攻。帰国後は塾講師やホステスなど様々な職業を経て、ゲームメディアの編集者を経験。その後、独立して業界やジャンルを問わずフリーランスとして活動。趣味は料理とPCゲーム。ストラテジーゲームとコーヒーが大好き。

Ritsuko Kawai

ライター・ジャーナリスト。カナダで青春時代を過ごし、現地の大学で応用数学を専攻。帰国後は塾講師やホステスなど様々な職業を経て、ゲームメディアの編集者を経験。その後、独立して業界やジャンルを問わずフリーランスとして活動。趣味は料理とPCゲーム。ストラテジーゲームとコーヒーが大好き。

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    • タイタンと呼ばれた女

      ホステスから物書きへ転身したジャーナリスト、河合律子の情けと挫折に塗れた人間失格の半生を綴った備忘録です。

    • ビジュアルメモリーズ

      幼い頃からセガハード一筋で遊んできた筆者が、ドリームキャストが隆盛を極めていた当時のゲーム業界を振り返る形で、ビジュアルメモリという名の外部記憶装置に永久保存された思い出の数々を掘り起こす青春連載。

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    タイタンと呼ばれた女 11話「私の居場所」

    目を閉じて眠りにつこうとするとたびに、これまで歩んだ人生のすべてを後悔の念で覆い尽くすような過去の記憶が蘇るのです。そうして私は、いつだってうしろばかり振り返ってきました。 後悔とは、存在し得ない世界線の妄想です。あの時もっと上手くやっていれば、あの時別の道を選んでいたら。そんな思考が可能なのは、紛れもなく失敗や挫折を味わった、「いまの自分」だからなのです。 つまり、「もし」などという仮定に基づいた別の過去は、決して論理的に成立し得ないタイムパラドックスのようなものです。

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      • タイタンと呼ばれた女 10話「私の記憶」

        当初の計画では、私の恥ずべき惨めな半生を時系列順に綴った後、この物語の結末として私は人生を終わらせるつもりでした。しかし、私の精神を蝕む呪いの進行は思いのほか早く、すべてを語れるかどうか自信がなくなってきました。くわえて、私の記憶が徐々に薄れていくのを日々痛感しています。私の防衛本能が、この十数年で起きたすべての厄災を私の記憶から取り除こうとしているのかもしれません。そういうわけで、前話から一気に時間を進めて、帰国後から直近までの記憶を先に綴ることとします。その上で私がまだ正

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        • タイタンと呼ばれた女 9話「Yと挫折」

          この手記を書き始めて早くも3年が経過しようとしています。あれから私の人生は大して変化していませんが、幸運か不幸か、執筆の依頼が徐々に増えたおかげで、この手記にまで精神エネルギーを費やす余裕が持てない生活が続いていました。おそらく、まだこれを読んでいる人はいないと思いますが、私は死ぬまでにやりたいこと「Bucket List」の最初の項目を、この手記の完成と定めているので、必ず記憶の断片をすべてかき集めて迷子の自分を安寧へと導ける地図を完成させたいと、いまでも願っています。実は

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          • タイタンと呼ばれた女 8話「Yと巨乳の女教師」

            Yが空手の師匠と出会ったのも、Kとの邂逅と同時期でした。その男、遠方から着任した新人の英語教師で、生活費を浮かせるためにYとKが暮らす宿舎の小さな一室を借りて、学生と生活を共にしていたそうです。あとは先に語ったとおり、この若きストリートファイターのアジア放浪記と武勇伝に魅せられたYが、無理を通して彼に弟子入りしたのです。 始めは昼休みや放課後に空いたプレハブ小屋を使ってマンツーマンで稽古に励んでいましたが、その後に二人は校長に直談判してポケットマネーを引き出し、それまでなか

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            Ritsuko Kawai

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            タイタンと呼ばれた女 7話「Yと親友」

            過去を大切に抱ける人は幸せです。どこから来て、誰と出会って、何を見て聞いて、どうやってここまで辿り着いたのか。そうやって残してきた足跡をひとつひとつ逆行して、自分が生きてきた僅かな匂いを時間の流れから嗅ぎ取って、巻き戻った景色の中に愛せる自分を写せる人は、本当に幸せです。心豊かであろうから。 Yがこの世を去った時、私の過去はドス黒い霧で覆われました。どこまで記憶を巻き戻しても、そこに見渡せる景色など到底広がっていないのです。そこにはただ、暗闇の中にぼんやりと映る、あの埠頭の

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            タイタンと呼ばれた女 6話「Yと師匠」

            私がYと毎年の初夏を過ごした公園には、あれから一度も訪れていません。そこは今でも日本海から吹く冷たい海風にさらされ、ほんのり潮の香る木製のベンチには、ほとんど誰も座っていないのかもしれません。だからこそ、もう一度同じ時間にあの場所へ行って座っていれば、あの時のままのYが私の隣に現れてしまいそうで、それがとても恐ろしいのかもしれません。 Yはずっと私に便りを届けてくれました。彼が思春期の獣道に残した足跡を、私はすべて追いかけてきました。ひとつひとつの足跡は私の心の中でずいぶん

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            タイタンと呼ばれた女 5話「Yの記憶」

            長きにわたって、私はYの半生について口を閉ざしてきました。それは彼がこの世を去った現実からの喪失感や、私だけが生恥を晒している現状に対する罪悪感などといった、もっとも人間らしい高尚な感情からではなく、Yという少年の過去そのものを私の記憶から消してしまうことで、自己嫌悪から逃げ出そうとするエゴイスティックな防衛本能からだったのかもしれません。しかし、その結果私は、とんでもなく暗い森の中を彷徨い続けることになったのです。 あの日、Yが遠い学校へ行くから会えなくなると私に告げた後

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            タイタンと呼ばれた女 4話「Yと私」

            私の半生を語るには、Yという少年の存在について語らなければいけません。彼の半生を忘れてしまったら、私はどうしようもなく迷子になってしまう気がするのです。私はYのすべてを知っていて、Yもまた私のすべてを知っていた存在。家族や恋人とは違うけれど、友人と呼ぶにはあまりにも親しい間柄。そんな関係を指す言葉は星の数ほど存在するかもしれないけれど、私の半身とも感じられるYを表現する言葉を、残念ながら私は知りません。 Yとは児童相談所の待合スペースで出会いました。その季節も時間も、ソファ

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            ビジュアルメモリーズ 第9話「ホッケおいしいイクラおいしい」

            Kと別れて再び独りぼっちになった私は、札幌から電車で30分ほどの観光名所、小樽へ向かった。ゲーム内では「春野琴梨」ルートで3日目に初デートの際にアンロックされるエリアで、ロシア人ヒロイン「ターニャ・リピンスキー」の攻略では毎日足を運ぶことになる。 ガラスの心に焔を入れて 今回の聖地巡礼で私がもっとも楽しみにしていた場所。それがターニャの職場として作中にも登場する小樽運河工藝館だ。残念ながら2011年に閉店してしまったが、当時はゲームで描かれたまま。 工房からは熱気が溢れ、

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            ビジュアルメモリーズ 第8話「何かが始まる彩りの予感」

            フェリーの船室で知り合ったスキー観光の旅行者たち、1週間宿泊したホテルのフロント係、夜中のラーメン横丁で絡んできた酔っぱらい。みんな私の顔を見るやいなや、保護者はどこかと尋ねてきたのを覚えている。 GPSが使えるスマホが普及した現在の事情は知らないが、当時は義務教育も終えていないような年頃の子供が、シェンムーの涼さん気取りで一人旅をしているなんて誰も想像しない。幼いころから、誰とでも友達になるのが得意だった。旅は道連れ。友達は現地調達。それが私のロールプレイだった。 イベ

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            ビジュアルメモリーズ 第7話「胸躍る北の聖地へスキップ」

            忘れもしない1999年12月下旬。まだ10代前半だった私は人生で初めて体験したギャルゲーの舞台にすっかり魅了され、日本海の波を切るフェリーの甲板でまだ見ぬ北の大地へと続く水平線を眺めながら、冬の海風に頬を赤らめていた。 ロールモデルはギャルゲのヒロインすべての始まりは、ドリームキャスト発売当初から毎月購読していた雑誌ドリマガの特集で、たまたま『北へ。』を目にしたこと。幼いころからヒゲとマッチョとゾンビが大好きだった私にとって、それまでギャルゲーなど一切興味の対象にならなかっ

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            ビジュアルメモリーズ 第6話「カニがいっぱいホタテいっぱい」

            前回までで、インターネットが今ほど家庭に普及していなかった時世にあってネトゲ文化に市民権をもたらした初代『PSO』の2000年と、時代をさらにさかのぼって世紀末シネマティックサスペンス『July』をテーマに、ドリームキャストが発売された1998年末を振り返った。 今回は名作ぞろいの1999年の中でも、ゲームの舞台をこの目で見たくて北海道へ一人旅したほど特に思い入れが強い作品『北へ。 White Illumination』の記憶にアクセスする。本作の生い立ちには当時の北海道経

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            ビジュアルメモリーズ 第5話「セックスレス体と恐怖の大王」

            忘れもしない1998年11月27日。その日、おもちゃのハローマックで事前予約していた私は、湯川専務の顔写真がプリントされたドリームキャストの箱を胸いっぱいに抱えて、満面の笑みを浮かべていた。そして、お父様の2か月分のお小遣いが吹き飛んだ。 ローンチタイトルのラインナップは、セガが執念で間に合わせた待望の『バーチャファイター3tb』のほか、『ゴジラ・ジェネレーションズ』『ペンペントライアイスロン』、そして『July』だ。 当時、周りの子どもたちが最初のゲームにゴジラやペンペ

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            ビジュアルメモリーズ 第4話「セガが最終決戦を挑んだ日」

            「1999年7か月、空から恐怖の大王が来るだろう。アンゴルモワの大王を蘇らせ、マルスの前後に首尾よく支配するために」(訳は諸説あり)というノストラダムスの大予言を覚えているだろうか。16世紀フランスの占星術師ミシェル・ド・ノートルダムが、著書「予言集」百詩篇第10章72節に残した言葉だ。 このパワーフレーズをゲームの冒頭に放り込んでドリームキャストの門出を祝したタイトルの一つが、フォーティファイブの世紀末シネマティックサスペンス『July』だ。筆者のビジュアルメモリに残る最

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            ビジュアルメモリーズ 第3話「夜だけの関係ラグオルデート」

            それまで既存のオンラインゲームではテキストベースのロビー画面が一般的だったこともあり、プレイヤーのアバターを介して直接触れ合い、シンボルチャットを使って感情を豊かに表現できる『ファンタシースターオンライン』(PSO)は、単なるコミュニケーションツールとしても便利だった。 もちろんロビーで知り合ったフレンドとの冒険も楽しんだが、チャットするためだけにログインすることもしばしば。当時、北米サーバーに入り浸りアメリカ人やカナダ人とばかりつるんでいたのを覚えている。ラグオル(PSO

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            ビジュアルメモリーズ 第2話「ネトゲが市民権を得た瞬間」

            一般家庭にインターネットが普及し始めたのは90年代初頭。ちょうどその頃、アバターによるチャット機能に加えて、ゲームにグラフィック処理が実装された世界初のMMORPG『Neverwinter Nights』が、1991年にMS-DOS向けに発売された。これが現代のオンラインRPGの土台を形作った最初のタイトルだと言われている。 その後、1996年末にハクスラの代名詞ともいえるBlizzard Entertainmentの『Diablo』が登場。MORPGの先駆けとして、全世界

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