実体験14 一般病棟へ

人工呼吸器抜管翌日。

「今日午前中に一般病棟に移ります」

右脇にまとめて4本入っていた点滴も抜かれ2針縫われた。

点滴は右手の甲に1本になった。
他は、右手の手首に採血用の針。
尿の管。
紙おむつ。
栄養剤と薬を投与する鼻からのチューブ。
胸には心電図。
左の爪に、血中酸素濃度測定器。
これでも随分身軽になった。

昨日やっと抜管し、ホッとする間もなく、手際よく荷物がまとめられ始めた。

ベッドサイドに座っていると、1人の看護師さんが

「あー、良かったぁー」

と、私の姿を見て涙ぐんだ。

どうやら、私が最初にICUに運ばれてきた時に担当されていた看護師さんだそうだ。

「ずっと気になっていました。無事、人工呼吸器抜けたのですね!あー、良かったぁー」

ICUでは生死を彷徨う患者がいて、残念ながら亡くなる方もいる中で、私のように元気になっていく患者は、本当に嬉しいそうだ。
こんなにも私のために心から喜び、涙してくださるなんて、、、
私も感謝と、もうICUとお別れしなければいけない寂しさで涙が溢れてきた。

ICUと一般病棟の看護師の引き継ぎが終わり、車椅子に移ると、一般病棟へ移動することになった。

最後に忘れ物がないか確認してくれた別の看護師も、

「言葉を交わすと泣きそうになるので、、、」
と黙ってお辞儀をした。

目には涙が浮かんでいた。

あー、もっと1人1人と言葉を交わし、感謝の気持ちを伝えたかった。

あんなに苦しい思いをしたICUを去るのが寂しかった。

もう会えない。
会わない方が幸せなのだ。
2週間のICUでの時間、、、
どんなに私1人の為に、沢山の方が関わったか、、、
24時間ずっと命をつないでくれた、、、
昼も夜も情報を共有して交替で見守ってくれた、、、
呼吸器や点滴の管理、歯磨き、洗髪、体拭き、下の世話、着替え、シーツ交換、筆談で少し個人的な会話もしてくれた。

ありがとうございました、、、
心の中で何度も繰り返した、、、

あっという間に、景色が違う病棟に移動した。

流れる時間のスピードが早い。
聞こえてくる音も違う。

個室の部屋に入り、看護師さんが荷物をある程度片付けてくれた。

「何かあれば、ナースコールを押してください」

病室で1人きりになった。

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