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四神京詞華集~shishinkyo・anthologie~

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2024年5月の記事一覧

四神京詞華集/シンプルストーリー(17)

四神京詞華集/シンプルストーリー(17)

【そして開始された、作戦】

穢麻呂「闇夜の神隠しを知っているか?」
ナミダ「噂だけは。月のない夜に雑仕女がかどわかされる事件ですよね」
穢麻呂「我が四神京に来る前からだそうだがな」
ナミダ「もうひととせ以上になりますね。衛士の網にも引っかからぬ事から都の怪異のひとつとして語られていました」
穢麻呂「衛士の目をかいくぐりか。当然だ。おそらくは衛士の動きを把握し指示を出し操れるほどの大物が黒幕なのだ

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四神京詞華集/シンプルストーリー(16)

四神京詞華集/シンプルストーリー(16)

【百屋の営業活動】

百屋「はい、今日ご紹介するのはですね、香木でございます。香木といってもそんじょそこらの杉やヒノキじゃありませんよ、奥さん」
ナミダ「いえ奥さんじゃないです」
百屋「香木の原産地、ご存じですか?」
ナミダ「唐っすか?」
百屋「惜しい! 唐の南の黄金諸島なる島々でのみ捕れる、枯れた木を加工したものです。お嬢さん」
ナミダ「はいお嬢さんです」
百屋「沈香。伽羅、百壇、龍脳、そういっ

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四神京詞華集/シンプルストーリー(15)

四神京詞華集/シンプルストーリー(15)

【百屋です】

「ナミダ……汝の名はナミダ。これよりはそう名乗るがよい」

的な?
そうちょっと格好つけた感じで小粋なシーンを自己演出してみた穢麻呂は、一週間も経たぬうちに大後悔する羽目になるのだった。
この女、とにかく使い物にならない。
昭和の名曲の歌詞にある
『炊事洗濯まるでダメ。食べることだけ三人前』
を地で行ってるのだ。
いっそ『プイと出たきりハイそれまでヨ』
になってもらいたい所なのに、

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四神京詞華集/シンプルストーリー(14)

四神京詞華集/シンプルストーリー(14)

【悪い黄門さま】

○人さらいのアジト(夜)
闇と同化するような濃い紫の袍(ローブ)と胞(マント)に身を包み、冠に雑面をつけた偉丈夫が現れる。
盗賊どもは幾分緊張し、だが表向きは平静を装い酒を飲み続ける。

雑面の偉丈夫「待たせたな」
盗賊1「いや」
盗賊2「お一人ですかい?」
雑面の偉丈夫「他の者には任せられん」
盗賊1「さすがは名高き悪黄門さまだ。肝が据わっとる」

雑面を取る、偉丈夫。

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