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四神京詞華集~shishinkyo・anthologie~

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2023年10月の記事一覧

四神京詞華集/NAMIDA(19)

四神京詞華集/NAMIDA(19)

【隠(おに)の子(4)】

○菅原石嗣の館・慧子の寝所(夜)
卑奴呼の大きな瞳がじっと慧子を見つめている。
怯んだのは何故か慧子のほうだった。
握った短刀の切っ先が小刻みに震えている。
と、卑奴呼は再びまどろみ、ゆっくりと白刃に触れようとした。
 
慧子「危なっ!」
 
慌てて刃を引っ込める慧子。
 
慧子「馬鹿! 指切れたらどうすんの!」
卑奴呼「……ふへ?」
慧子「って、馬鹿は私じゃない……」

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四神京詞華集/NAMIDA(18)

四神京詞華集/NAMIDA(18)

【隠(おに)の子(3)】

○菅原石嗣の館・庭(夜)
一介の地下貴族の郎女だった日々から何日も経ってないのに、我が家の庭は廃墟に見えた。
いかに丑三つといえど、人気が微塵も感じられない。
そろそろ朝げの支度に起きる者がいてもいいのに。
家人たちはもう散り散りになってしまったのだろうか。
父上は今宵も内裏の机を枕にしているのだろうか。
大丈夫。
私が人に戻れば、全てはもとに戻る。
私に呪いをかけた者

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四神京詞華集/NAMIDA(17)

四神京詞華集/NAMIDA(17)

【隠(おに)の子(2)】

○菅原石嗣の館・外(夜)
こん。

慧子「あれ?」

こん。

慧子「あれ?」

こん。

慧子「あれ?」

一刻前の緊迫感とは打って変わって慧子が放つ鉤爪は甚だ呑気な調子で何度も何度も築地塀に跳ね返されている。

淡子「な、何ゆえ左様な物騒なものを」
慧子「決まってるでしょ。キッツイ麿の舘に忍び込んで首チョンパしてやろうと思ってたんです。あいつが私の枕元に忍び込んで呪

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四神京詞華集/NAMIDA(16)

四神京詞華集/NAMIDA(16)

【隠(おに)の子(1)】

○荒れ寺(夜)
ところでこの物語にやたらと寺が出てくるのは、男女が出てくる場面にバーだの喫茶店だのを使いたがる、創作初心者の柱立てと同じくらいの想像力の乏しさなんだろうなと鼻で笑って頂いて一向に構わないが、言い訳を許してもらえるなら実際四神京にはお寺が多いからだ。
なにせ遣唐使が持ち帰った仏教のテクノロジーを駆使して建設された都市である。今の帝も先代の帝も揃って受戒して

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