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四神京詞華集~shishinkyo・anthologie~

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2023年8月の記事一覧

四神京詞華集/NAMIDA(14)

四神京詞華集/NAMIDA(14)

【妬にへばり憑かれたワタシ】

○尊星宮・拝殿(夜)
遠くで寺の鐘が鳴る。
欠伸を噛み殺しながら言葉を続ける穢麻呂。

穢麻呂「まあ、差し当たってはその年相応な恋模様から顧みてはどうだ?」
慧子「斯様な男と恋など…ぞっとします」
穢麻呂「早速思い当たったか」
慧子「でも恨まれる筋合いなどありません。はっきりと断ったし」
穢麻呂「それで割り切れぬが公家という輩の恋であろう。汝も拒絶した男がなお自分に

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四神京詞華集/NAMIDA(13)

四神京詞華集/NAMIDA(13)

【穢麻呂と狛亥丸とワタシ】

幾つも吊られた下げ燈篭が広い拝殿内を仄かに照らしている。
だが神棚以外の神器神具の類はほとんど見られず、恐らくは本殿とをつなぐ幣殿へと続いているであろう閉ざされた扉に、注連縄が張られている程度である。
良く言えば簡素、悪く言えば殺風景。
どう考えても寝泊りできればそれでいいだけの単なる仮住まいとして古い神社を利用しているようにしか思えないし、そんな慧子の疑念は半ば当た

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