勇しく進んでいたつもりだった。
歩みは決して止めなかった。
足の痛みは感じていたが、
そんなもの、と気にしなかった。
気付かぬふりをした。

その先に、素晴らしい世界があると知っていたから。
その世界が、自分を待っているから。
信じて疑わなかった。

風が吹こうと、雨が降ろうと
歩くことだけはやめなかった。

多くのものを犠牲にした。
信じられるのは自分だけだと、
脇目も振らずに歩いてきた。

足の痛みはさらに酷くなっていたが、
そんなものに構う暇はなかった。
後ろから小さな声が聞こえてきたが、
振り返る余裕もなかった。

ふと
景色がほとんど変わっていないことに驚き、
急に走り出す。
自分の思い描いていた世界が
全くの幻想だと悟ったとき
周りの景色が無機質なものへと変化する。
足の鈍い痛みが、立てないほどの激痛に変わった。

足を抱えて、のたうち回る彼が見た、
今まで進んできた道は、
血で真っ赤に染まっていた。

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