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りとくんの特性

りとくんが学校に行きたくないとぼくたち夫婦にはっきりと伝えた日。
それが不登校の始まりでした。

でも、その日が来る前に、ぼくたちは不登校について色々と前情報を得ることができていて、不登校が不幸の始まりではないという心構えが多少なりともできていました。

そして、りとくんの不登校にさほど戸惑いを覚えなかった理由がもう一つあります。
それは、ズバリ、りとくんが注意欠陥多動性障害、いわゆる ADHD の特性を持っていたからです。

点と点がつながった先

あれは、保育園の卒園を数カ月後に控えたある日のこと。
ぼくたち夫婦は保育園の先生からお話がありますと呼び出されました。
いままで見たことのない畳敷きの小さな部屋に通してもらい、先生が神妙な面持ちでこうおっしゃいました。

「りとくんは、他の子たちと成長のしかたが少し違うかもしれません。」

もちろん、いきなりこんなにストレートなお話があったわけではありません。でも、例えば登園時にカバンをロッカーにしまうとき、席について先生のお話を静かに聞くとき、給食の時間がおわって食器を片付けるとき、りとくんがみんなとおなじようにできないことを、先生は心配されていました。

もしかして、発達障害?

それまでも、日常の中でその兆しはたくさんありました。
一緒に買物に行くと、シートベルトから解き放たれたその瞬間から、りとくんは駐車場からスーパーの店内まで縦横無尽に走り回るので、親としては交通事故に巻き込まれないか、他のお客さんとぶつかってしまわないか、商品を盛大にバラまいてしまわないか、いつも心配でなりませんでした。
大事なことを伝えようと目を見て話をしても、いつもキョロキョロソワソワしてしまって、話がぜんぜん伝わらないこともしょっちゅうです。
なによりも、忘れ物やなくしものがすごくて、鉛筆や消しゴム、カバンなどの持ち物は、保育園や習い事の場所に置いてきてしまうことが日常茶飯事でした。

6歳の男の子だったらこんなものなのかな?と、それまでさして気にしていなかったことが、あまり目にすることがなかった保育園での生活ぶりとつながったとき、他の子どもたちがたどる成長の方向やペースとりとくんとの差が大きくなっていることがわかりました。

主治医の先生からの正式な診断が下る順序は若干前後するのですが、小学校入学前の時点で、りとくんの特性についてはほぼ覚悟が決まっていました。
集団で滞りなく行動をするために、静かに座って先生の話を聞いたり、周囲に注意をはらいながら自分の行動を抑制したりすることは、ADHD の特性をもったりとくんにはかなり難しく、苦痛を伴うことになるだろうな、と。

発達障害≠不登校

発達障害はバリエーションというか組み合わせやスペクトラムがとても広く、本人の特性についても、それが原因となって生じる周囲との摩擦や生きづらさについてもかなりの個人差があります。発達障害の特性があることで必ずしも不登校になるわけでもありませんし、逆にそうした特性がなくても不登校になることもあると思います。
ただ、りとくんの場合はその特性が学校という環境にどうしてもあわなかったため、慌てず騒がず、ぼくたち家族は結果として不登校を選ぶことにしました。

次回は、りとくんの特性と学校という環境との不一致について、書いてみたいと思います。

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