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なぜIELTSのWritingスコアが停滞してしまうのか?

【はじめに】

このアカウントは、IELTS OA8.0/ British Council公認のIELTSエキスパートである筆者が、効率的にスコアアップするための学習法についてまとめています。

今回は「Writingのスコアが停滞する理由」について。

結論から言うと、多くの場合以下の2つです。

① エッセイの質が目標スコアに対して足りていない (特に6.5で停滞)
② 書くスピードが足りていない (特にW6.0-6.5が目標)

つまり、エッセイの練習は「質」「スピード」の2つを軸に行っていくべきだということです。

どちらも当たり前のことかもしれませんが、スコアの停滞を打ち破るにはそれぞれを深堀りして具体的な学習法にまで落とし込んでいく必要があります。


【エッセイの質とは?】

語学試験において「エッセイの質」というのは「採点基準に沿った内容になっているかどうか」という一点に尽きます。採点基準こそが黄金ルール。

IELTSは以下のようにWritingの採点基準が明確に設定されています。

出典: https://takeielts.britishcouncil.org/sites/default/files/ielts_writing_band_descriptors.pdf

なお、この4つの採点基準にはそれぞれ1.0刻みでスコアがつきます。

経験上、Writingは6.0までならそこまでシビアに採点基準を意識せずとも、基礎的な文法、単語とアカデミックライティングの基礎さえ学んでいれば、学習量に比例して難なくスコアアップしていく方が多いように思います。

ただ、そこから上(特に7.0-7.5)を目指す場合に「学習を重ねているのにスコアが上がらない」という状況に陥る方が少なくなりません。

これを解決する方法は非常にシンプル。

「採点基準を見て目標に達していない部分を詰めること」(= 質を高めること)です。

例として「目標は7.0だが、6.5で停滞」のケースを見ると、現状4つの採点基準のうち

「2~3つは7.0に届いているが、残りの1~2つは6.0で止まっている」

ということが想定されます。

この「採点基準における弱点」を意識して学習していない。あるいは「弱点だと思っている場所がズレている」場合、「いくらエッセイを書いてもスコアアップに繋がらない」という状況に陥ってしまいます。

特によくあるのが、ひたすら難解な単語や文法をインプットしているパターン。

この根底には「ハイスコア(W7.0以上)」=「難しい英語を使用する必要がある」という意識があるのだと思いますが、これは大きな誤解です。

実際はW7.0であっても高校レベルの文法と単語を柔軟に使いこなせれば十分に到達可能です。(一部の難関校というわけではなく、いわゆる一般的な高校英語のテキストに載っているレベル)

W7.0以上のハイスコアを目指す方ほど、英語の難易度にこだわってしまっているケースが多いので「何故だろう?」と考えたことがあるのですが、共通していたのは独学、あるいはただのネイティブ(言い方は悪いですが、IELTSの採点基準を熟知しているわけではない指導者)に指導をしてもらっているパターン。

「英語の正確さ」「表現の難しさ」ということで考えると、そこまでIELTSの知識が無くても指導はできますし、独学でもAIや添削アプリを使えば「英語的に精度の高い文章」は作ることができます。

ただ、それは4つある採点基準のうちの2つ「Lexical Resource」「Grammatical Range and Accuracy」でしかないため、ここだけにフォーカスしていても7.0以上にはなかなか届きません。

そうなった場合に見るべきは採点基準の残り2つ「Task Achievement/ Task Response」「Coherence and Cohesion」です。

これらが目標スコアに到達しているかの判断は「IELTS的」な要素が含まれてくるため難しいところです。

例えばTask 1について言えば「数値のどこをピックアップするか/ 全体像は何か」、Task 2で言えば「どのようなアイディアで、それをどの程度発展させていくか」などがキーになってきます。

上記を踏まえたうえで「質を高める学習」のスタートは「IELTSの採点基準について熟知しているプロにエッセイを何枚か見てもらい、目標点数に対して届いていない採点基準の項目を明確にしてもらうこと」です。

IELTS講師の僕がこれを言うと安易なセールストークになってしまいますよね…。

しかし実際のところ、独学あるいは安価な添削サービス(IELTSに関しての知識が乏しい講師によるもの)で学習していた結果、いつまで経っても7.0-7.5を超えられず、スコア提出期限ギリギリになって駆け込みで「どうにかしてください…」とお問い合わせをいただくケースが本当に少なくありません。

そうなると本来のスケジュールであれば達成できるはずのスコアも達成できなくなってしまいます。

なのでコストはかかってしまいますが、まず信頼できるプロのアドバイスを受けて学習の方向性を定めてから、独学なりオンライン添削サービスなりを利用するのが最高率だと思います。

【書くスピードについて】

書くスピードが遅いことの何が問題かと言うと、時間内で規定の文字数まで書き切ることができないということだと思います。

これはスコア6.0以下の初心者〜中級者に多い問題ですが、

そもそも論として、文字数は規定数を超える必要があるのでしょうか?

結論から言うと「6.0まではMustではない」です。

以下、「スコア別に最低限クリアしたい文字数」を設定してみました。

「~5.0」 = 規定数の半分
「5.5~6.0」 = 規定数のマイナス10~15%
「6.5~」 = 規定数以上~規定数のプラス10%程度まで

※「この文字数がスコアを保証する」という意味ではなく、あくまでも目安

ということで、6.0くらいまでは規定の文字数を超えていなくても達成することはできます。

なぜかと言うと、IELTSの採点基準には文字数が少ないことによる直接的なペナルティは無いからです。

つまり、規定の文字数を超えることを意識してスピードを高めるあまり、クオリティの低いエッセイになってしまえば元も子もないということです。

なので、目標が6.0までの方はまずエッセイの質を目標点数の水準にまで高めることをおすすめします。

ただ、裏を返せば6.5以上を取りたいのであれば文字数は基本的にクリアしたいですし、そこで文字数をクリアすることに意識が向くあまりクオリティが落ちるのであれば、スピードの強化は絶対です。

とはいえ、書き過ぎるのも注意。文字数が増えると単純に文法や表現上のエラーを犯す可能性が高まるので非常にリスキーです。

かつ、冗長になってしまうと流れも悪くなり、内容にも影響してしまうため、規定数のプラス10%くらいの設定にしています。

とにかくWritingの黄金則は「少ない文字数で、より多くのことを表現すること」です。

【効率的な学習法: 「質」⇒「スピード」の順で行う】

ここからは具体的な学習法について見ていきます。

まず、エッセイの学習は「質」⇒「スピード」の順でフォーカスしていくべきです。

なぜかと言うと、基本的に「制限時間」という強い負荷がかかった状態で書くエッセイはクオリティが低くなるもの。

だからこそ、それだけを繰り返していると、ひたすら質の低いエッセイを再生産し続けることになります。

当たり前ですが目標スコアにクオリティが達していなければ、いくら時間内に書けたとしても意味はありません。

- 質を高める方法

質を高めるために大切なこと、それは同じエッセイを2回書くことです。

1回目:制限時間内で書く
2回目:制限時間なし、かつ辞書などを用いて書く

まず1回目はテスト本番を意識して制限時間内で書きます。

60分以内でTask 1と2を書いてもいいですし、低負荷にするなら本番でしたい時間配分でそれぞれのタスクを分けて書いても良いと思います。(ペーパー受験なら紙に書く、PC受験ならタイプすること)

これをする理由は「制限時間内での自分の現状パフォーマンスを把握すること」です。

そして書けたら必ずエッセイを自分で見直すこと。

それによって「文法や表現の幅と精度、スペルミス、構成、アイディア」など、いろいろな面での問題点がある程度は見えるはずです。

そして、2回目は↑で書いたエッセイを制限時間無しで辞書や参考書、ネット検索など、ありとあらゆるツールを使用して「理想のエッセイ」に仕上げます。

ここの目的はもちろん「エッセイクオリティの引き上げ」ですが、本番で書けないレベルまで上げないように注意。

あくまでも再現性がある中での高レベルを目指しましょう。

レッスンなどで添削を受けることが出来る方は、出来るだけこの段階のエッセイを添削に出すことをオススメします。

なぜかと言うと「自分で気がつけないエラーにこそ価値があるから」です。

それは文法や表現のような英語的な面でもそうですし、アイディアや構成面などもそうで、本質的なエラーは時間をかけたとしても自分では気がつけず、それを指摘してもらうことが添削を受ける一番のメリットだと思います。

それにもしレッスンを受けるのであれば、自分で気がつけるエラーの説明に時間を割かれてしまうのはもったいないと思います。

- スピードを高める方法

ここでのポイントは、問題タイプごとに自分なりの「構成/ アイディア」「使う表現」を決めてしまうことです。

Writingは以下のように問題タイプを大別することができるので、それぞれに共通、あるいは個別に使える表現や構成、アイディアなどをリストアップしていきます。

Task 1は「6タイプ」

・折れ線グラフ
・棒グラフ
・テーブル
・パイチャート
・地図
・プロセス

Task 2は「3タイプ」

・片方の意見を求められるもの
Do you agree or disagree?/ Do you think this is positive or negative?

・両方の観点が求められるもの
Describe the advantages and disadvantages./ Do the advantages outweigh the disadvantages?

・疑問文が2つのタイプ
Why might this be the case? What do you think the government can do to solve the issue? (疑問文の内容はバリエーション有り)

特にTask 2は試験だと割り切って「書きたいこと(自分の本当の意見)」よりも「書けること(アイディア的に書き慣れている汎用性の高いもの)」で書く方が点数に結びつきやすいと思います。

例えば、「健康」「お金」「新しいルールをつくる」「幸福」「環境問題」のように、どのようなトピックが来ても使えそうな汎用性の高いアイディアをストックしておくことは有効です。

このように問題タイプによって固定化できる部分を見つければ、試験中に自由発想で生み出す文章量が少なくなり、時間の節約に繋がります。

あとは上記で固めた内容を反復練習で繰り返していくことによって、Writingにかかる時間は短縮していけるかと思います。

【おわりに】

ということで、Writingのスコア停滞から抜け出す最も効率的な方法は

「採点基準に照らし合わせて自分の弱点を見つけること」です。

それから「質」⇒「スピード」

という順番で学習を進めていきましょう。

今回はIELTSを想定して書きましたが、TOEFL、英検など、ある程度どの英語試験でもあてはまる学習法ですので、ぜひ意識してみてください。

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Writingで6.5をマークした実際のエッセイを用いてポイントを解説しました。全レベル帯に当てはまる得点アップに欠かせない点について書いています。

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ではまた。

古谷 理太

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