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木次線


さて夜行バスにて島根県松江市に上陸を果たしたわけであるが、その理由は日本屈指のローカル線である木次線に乗るためである。

旅に出るまでの葛藤

実はこの夜行バスを予約する前、トロッコ列車「奥出雲おろち号」の予約が満席で不可能なことを知った。このことで今回の旅を取りやめるかという悩みに苦しむことになる。なぜなら今回の旅の目的が

  1. 2023年度をもって運行終了する「奥出雲おろち号」の乗車

  2. 秘境駅備後落合駅の滞在

の二つにあったからだ。
それがどちらも実現できない。(「奥出雲おろち号」の次の列車は備後落合3分接続なのだ)

悩みに悩んだが結局は夜行バスの予約ボタンを押した。
貴重な休日を過ごす他の代替え案が思いつかないのだ。それに木次線に乗ること自体の機会がなくなることをも危惧した。これまで私が木次線に乗れなかった理由の一つとしてこちらを訪れるたびに自然災害による運転休止に遭遇していたからだ。昨今では各地での豪雨災害が後を絶たない。木次線もまた停まるかもしれない。そして木次線のみならずここ一体のローカル線全ての経営状態が危機的状況のため、復活すらないかもしれない。そういった事情が私の最後の一歩を踏み出させてさせてくれたのだ。行けるうちに行っておこう。

宍道駅→木次駅

宍道駅木次線ホームの駅名標

木次線の旅の始まりは宍道駅。
木次線ホームには思っていた以上に人で溢れかえっている。
駅周辺にすら人影がまばらな中でのこの光景は、18きっぷシーズンと
本数わずかな秘境ローカル線といった条件が揃ってこそ見られるものだ。
このこともある程度予想はしていたが、乗客まばらな車両でのんびりゆったりと静かな旅を楽しむという私の願望はあっさりと打ち砕かれたようだ。

キハ120形(木次線カラー)
キハ120形(オレンジ1色)

今回やってきたのは上の画像の2両編成。
立客こそは出なかったもののそれでも9割は座席が埋まった。

宍道駅を出ると、山陰本線とすぐに別れ進路を南へ変えて終わりの見えない山の中へと向かっていく。次の駅は「南宍道駅」。駅名からしてすぐに着くのかと思ったが、その予想はすぐに覆されぐんぐんと建物もまばらとなる山の中へと入ってく。5分以上かけて南宍道駅に到着。一つ一つの駅間の長さや周りの風景の変化も相まってこれから始まるローカル線の旅の壮大さを予感する。

木次駅

木次駅に到着。この路線の中枢駅であり、ここで折り返す列車も多い。

機関庫

木次駅→出雲坂根駅

木次駅を超えるとさらに山は深くなる。
森をかき分け、主要駅周辺でようやく集落が見え、また森に入る。その繰り返しだ。
出雲横田駅で10分ほど停車。駅舎を見ると出雲大社を彷彿させる大きな注連縄が駅舎の存在感を際立たせる。島根県のシンボルともいえようか。

出雲横田駅

まもなくすると、この木次線一番の見せ場。「三段スイッチバック」の出雲坂根駅に到着。ここで心底乗りたかった「奥出雲おろち号」との待ち合わせも兼ねて長時間停車となる。

まもなくするとスイッチバックの上から「奥出雲おろち号」が姿を現した。
信じられないほど高いところから現れるが、紛れもなくこれから我々が通る線路である。

しばらくすると「奥出雲おろち号」が出雲坂根駅まで下りてきた。周りの人も一斉にカメラを向けるが、このタイミングで今までギリギリ保ち続けてきた天気が崩れ、大粒で大量の雨が襲い掛かってきた。なんと酷いタイミングだ。すぐに車内へ駆け込む。

奥出雲おろち号

出雲坂根駅→備後落合駅

急ぎ車内に避難したら、いよいよ我々の乗る列車がスイッチバックを攻める時だ。
線路の合流点にはシェルターの完備された分岐器があり、ここもまた雪国なのだということと同時に、人が立ち入って雪かきなど整備するのも困難なことも表している。

線路の分岐ポイント

そして折り返し地点にて途切れる線路を見ると、まるで廃線区間にでも踏み入れたかのような錯覚を覚え、これはこれでとても趣がある。

スイッチバックの折り返し地点

スイッチバックを越えると、進行方向右手側に並行する国道314号線の一番の見どころ「奥出雲おろちループ」が姿を現す。
こんな山中にこのような巨大建造物が突然現れたその瞬間は圧巻であった。それでもこの木次線から見たものはほんの一部であることには違いない。
次は車で実際に渡りたい。また行きたいところが増えてしまった。

奥出雲おろちループのほんの一部

こうして終点の備後落合駅に到着する。この秘境の終着駅ももう少し堪能したかった。わずか3分の接続ではどうしようもない。すぐさま芸備線の新見行きに飛び乗ることしかできなかった。

備後落合駅


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