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【アパレル業界】洋服の未来を考える

1. アパレル業界で何が起きているのか?

■ECプレイヤーの驚異的な台頭

日本のアパレル業界の市場規模は、2013年の15兆円から2020年の10兆円に大きく減少している。その一方で、洋服の供給点数自体は2倍(40億点)に増えているという不思議な現象が起きている。加えて、”洋服は新品を買うもの”という常識が覆され、中古の洋服やオフプライスストアが日本にも浸透し始めている。

劇的にアパレル業界が変化しているのは明らかだが、その中でもECプレイヤーの台頭がアパレル業界においても驚異的であると言えそうだ。Covid-19の流行に伴い、日本における洋服購買のEC化率は15%から35%に増加。アパレル関係者が脅威と認識しているプレイヤーはZOZOTOWN、メルカリ、Amazon等が挙げられる。消費者がECで洋服を購入することに慣れてきた傾向も後押しし、ECでの購入はますます加速するだろう。

しかし、安易に大手ECモールへの出店を行えば良いというものではない。ECモールサイト運営会社から手厳しい手数料がとられる為、アパレル経営者は利益獲得の観点を持ちながらデジタルの波に乗らなければならず、アパレルに関わるビジネスパーソンの悩みの種となっている。

■コロナ時代における洋服購買インサイトの変化

アパレル業界の全ての企業が痛手を負っているのか?と問われると、そうとも言い切れない。例えば、ZARAブランドを擁するインディテックスは売上2兆/営業利益1千億をたたき出し、ファーストリテイリングの当期純利益は2019年同等程度を維持し、しまむらも大健闘している。

上述したような所謂ファストファッション系の会社が健闘していることからも分かる通り、つまり、不況においてアパレルビジネスは、単価が安い洋服が売れ、ブランド色の強い高価な洋服は売れなりという特徴が挙げられる。

特にしまむらは、安い洋服が買えるだけでなく、外出自粛要請に伴い近場で洋服を調達したいという需要が高まり、ご年配の方々でもリーチしやすい地域密着型の店舗展開が功を奏している。(その証拠にしまむらのEC化率は高まっていない。)

■店舗経営者の苦労

先日、アパレルブランドを経営する方々と対話をする貴重な機会を頂いた。想像をはるかに超える程に、Covid-19の流行がリアル店舗の運営に与える影響は甚大だ。外出自粛により客数が減ってはいるもののリアル店舗が店を閉めてしまっては全く売りが立たなくなってしまう為、店舗を閉じることは出来ない。

売上が上がらない一方で、販売員へのお給料、賃料等の固定費は払い続け、洋服の在庫が膨れ上がり、資金ショートしてしまい金融機関に運転資本増強のお願いをするケースも増えてきているとの事。

先述した通り、ファーストリテイリングやインディテックス等の大手企業寡占となり、中小ブランドは財力がある会社(または財務を戦略的にコントロール出来ている会社)だけが生き残っている険しい状況だ。

2.アパレル業界におきている問題の真因は何か?

■ECの利便性に気付いてしまった消費者

Covid-19流行以前からECを利用していた人もいるかとは思うが、Covid-19をきっかけにECを利用する人が急激に増えているのは間違いないと言えるだろう。一度ECで洋服を購入してしまうと、その便利さを知ってしまい、むしろ消費者は今後ECを中心に洋服を購入することが予想される。このトレンド自体おかしなことではないが、EC化の促進によりますますアパレル大手またはZOZOTOWN、メルカリ、AmazonといったECサイト運営会社の寡占が進む。

『アパレル・サバイバル』齋藤孝浩著によると、EC購買とリアル店舗購買の戦略的使い分け(オムニチャネル)も大きな論点となる。現状、購入経路として店舗とECそれぞれを設けているものの、在庫の共有化がなされておらず、かえって洋服販売のマネジメントが上手くいっていないケースも存在しているようだ。
(『アパレル・サバイバル』齋藤孝浩著https://www.amazon.co.jp/%E3%82%A2%E3%83%91%E3%83%AC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%B5%E3%83%90%E3%82%A4%E3%83%90%E3%83%AB-%E9%BD%8A%E8%97%A4-%E5%AD%9D%E6%B5%A9/dp/453232260X

■良い洋服?欲しい洋服とは?

そもそも論として現代の人々はどんな洋服を買いたいのだろうか?欲しい洋服・良い洋服とは何なのだろうか?2000年以前迄はまで”安かろう悪かろう”の考え方が強く残っていたが、2000年以降日本ではファーストリテイリングを中心としたファストファッションが登場し”安いのに品質のいい洋服”が登場し始めた。そして、最近ではモデルや芸能人が着ているような超最新デザインの洋服を安価で購入できるようになってしまった。

昨今では、社会課題解決に向け地球既規模での目標SDGsが掲げられ、地球や働き手にとっても素晴らしい洋服づくりも注目されている。「デザイン性」「価格」の勝負だけでなく、環境にまで配慮された洋服を作らなければならず洋服の開発はますます難易度が増すばかりだ。

3.アパレル業界をより良くしていく為の提案

■洋服ちゃんが経験するジャーニーを考える

ここまでの話を振り返ると、実は洋服の”売買”に関する話しか扱っていない。洋服ちゃんにとっては、売買されて終わりではなく購入されてからがやっとスタートなのである。買ってくれた人が気に入った洋服を末永く着てもらう為にも、洗濯、収納、染色、修理、クリーニングといった購入後のサービスをアパレル企業が提供するムーブメントにも期待したい。

■Made in Japanを押し出せるか?

関税の問題、国によるサイズの異なり等の難しさはあるものの、海外にはまだまだMade in Japanに対して信頼と品質を感じてもらえる国がある。「日本人がデザインした服」「日本人が作った服」を世界に発信できると新たな活路を見出せそうだ。(または単に「made in Japanと表記出来ればOK」か?)

■アパレルメーカーがエコサイクルを考える

アパレル業界に起きている問題の真因は何か?にも触れさせて頂いた通り、やはりSDGsへの関心の高まりは見過ごすことが出来ない。洋服のリサイクル、洋服の長期利用促進等、環境に配慮した取り組みをビジネスとして成り立たせることが出来れば、企業価値を高められる取り組みになるだろう。