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「ユニフォームを見るだけで怖い」岸岡智樹が振り返る東福岡との苦い一戦
本特集企画「決戦前夜~眠れない夜の裏話~」では、アスリートやスポーツ指導者などの「決戦前夜」に迫ります。第7回のゲストは、ラグビーリーグワン クボタスピアーズ船橋・東京ベイに所属する岸岡智樹選手です。
高校ラグビーの名門・東海大仰星高校から早稲田大学へと進学。ラグビー選手としては小柄でありながら、『頭脳』を生かしたプレーでチームを引っ張る司令塔として活躍を続けてきました。今回は、ラグビーを始めたきっかけと、高校時代に経験した眠れない夜について伺いました。
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恩師に背中を押され、名門・東海大仰星高校へ
子どもの頃から体を動かすことが好きだったので、母が「何かスポーツをやってみたら?」と習い事が載っている地方紙を見せてくれたんです。「自分で選びなさい」という教育方針だったので、家から自転車で5分くらいのところでやっていたラグビー教室に行こうと。僕の地元の大阪府枚方市は全国大会常連高校がそろうなど、ラグビーで有名な地域なのですが、当時僕の周りにはラグビーをやっていた友だちもいなかったですし、競技についても全く知りませんでした。
小学校5年生の時、転校生が僕と同じラグビーチームに入ったんです。家も近かったので、すごく仲良くなりました。ある日、その子から「ラグビー部のある中学校に一緒に行こう」と誘われて。正直その時は、「そこまでラグビーも好きじゃないし、どうしよう」と思いましたね(笑)。でも、「他にやりたいこともないし、その子と一緒なら」ということで同じ中学校に進学しました。今となって振り返ると大きな決断だったなと。
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中学時代のラグビー部での写真
<写真:本人提供>
僕の中学入学と同じタイミングで赴任してきた先生が、大阪の選抜チームを率いた経験のある方でした。その先生から「お前はここだ」と、現在と同じSO(スタンドオフ)というポジションを任せてもらいました。先生のご指導の下、大阪の選抜チームに入ることができました。選抜に入る実力のある選手は、小学校入学前からラグビーを始めている子がほとんど。僕は比較的競技を始めるのが遅く選抜に入る可能性もないと思っていたので、自信になりましたね。
それでも全国には実力のある選手がたくさんいますし、自分がラグビーの名門といわれる高校で試合に出ているのもイメージできなかったので、一般受験で普通の高校に進学しようと考えていました。そんな中、東海大仰星高校から声を掛けていただいたんです。中学校の先生も東海大仰星のOBだったこともあり、進学を決めました。
頭を使ったラグビーで勝負しろ
高校入学後は、365日ラグビー漬けの毎日が始まりました。朝6時半に家を出て、7時ごろに学校へ到着してから1時間ウェイトトレーニング。授業を挟んでまた練習です。施設の管理人に見つからないように(下校時間時ギリギリの)20時まで練習をして、帰宅後はご飯を食べて寝るだけでした(笑)。
高校生の時が一番寝ていましたね。日付をまたぐことなく、23時には寝ていたと思います。勉強はテスト前で部活が休みの時に、まとめてしていました。
東海大仰星高校はラグビーの名門と言われるにふさわしく、全国大会優勝が義務づけられているような環境でした。部員も3学年合わせて100人を超えていますし、グラウンドも他の部活と分け合って使うので、週7で練習をしても時間が足りなかったです。
その背景には「端にいってしまう選手を中心に巻き込んで、部員全員が一丸となる」という部活動の方針がありました。AチームやBチームなどと選手を実力別に分けて練習することは簡単ですが、そういった体制に逃げるのではなく、「選手全員が中心にいるチームは必ず強くなる」という思いが込められていました。
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高校時代のラグビー部での写真
<写真:本人提供>
高校ラグビーにおいて、全国レベルまで達すると、体格差はあまり関係なくなります。ではどこで差をつけるかというと、戦術です。僕は他の選手と比べて体が小さかったので、「お前が一番頭を使ってラグビーをしろ」と言われてきました。
ラグビーの魅力といえば、選手同士の激しいぶつかり合い。ですが、チームの司令塔としてプレーするなかで、「真正面からぶつかるのではなく、いかに知恵を絞って相手を攻略するか」という緻密に計算されたラグビーも好きになりました。
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突然のレギュラー抜てきで眠れない夜
高校1年生の春、代替わりをしたあとの全国大会ベスト4を決める試合で、当時全ての大会で優勝するほど強かった東福岡高校と対戦しました。それまでリザーブだったのですが、突然レギュラーに抜てきされたんです。試合の前日に発表されたのですが、その夜は眠れなかったですね。今後に向けていろいろな選手を試したかったのだと思いますが、「いきなりにも程があるだろ」と(笑)。
しかも、ポジションは本職ではないSH(スクラムハーフ)。普段のポジションとは求められている役割も動きも違うのでパニックでした。東福岡は体が大きい選手が多く、どっしり構えるチーム。素早くボールを繋いでプレーのテンポを上げ、相手を置き去りにすることだけに絞ってプレーしよう、と。監督からも、小柄であるからこそできる役割を求められていたのだと思います。
結果は僕自身のパフォーマンスも悪く、接戦の末に負けてしまいました。その後も、夏のベスト4、冬のベスト8でも東福岡と対戦して敗戦。1年を通じて負け続けました。翌年、全国ベスト4で東福岡と対戦して、前年のリベンジを果たし勝利した瞬間に号泣したことを覚えています。ただ今でも東福岡のユニフォームを見るのは嫌ですね(笑)。
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