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「海外からの高度人材」は絵に描いた餅?

先日、岸田首相が海外からの高度人材誘致を加速するため、教育や生活環境等の整備等の受け入れ制度を改正すると表明しました。特にカーボンニュートラルや人工知能、量子技術を重点に置き国際的な日本の競争力を高めることが目的です。


海外からの人材誘致の前に、日本の競争力を高めるには、そもそも制度面で二つの大きな課題を抱えていると考えます。


競争力を低下させている課題

課題①煩雑な行政手続き

一つ目は煩雑な行政手続きです。渡英して感じたのは、デジタル化の浸透です。バスや地下鉄はもちろんキャッシュレスで物理的なチケットは存在しません。不動産の契約も、ナーサリーの申請や普段のやり取りも、自治体への転入届けも、銀行口座を開くのもすべてがオンラインで済んでいます。
子供のお手伝いで、個人情報が載っている紙を手動のシュレッダーで処分するのお仕事がありました。が、渡英してからはそもそも不要な紙が出てくることがなく、子供のお仕事が一つ減ったくらいです(笑)
日本にいたころは、自治体や保育園からのお手紙や領収書等放っておくと山積していた紙が、めっきりなくなりました。それほど、日本はデジタル化が遅れていたんだと感じてます。
上記は日々の生活においての例ですが、例えば日本では道路の占有許可や、販売許可の代表者に変更になった際の申請方法・書類様式が自治体で異なります。

登記簿謄本や課税証明書等多くの自治体で原本を求められ、その都度お役所に出向き、時間と費用をかけて取得する必要があります。
その分新たな投資に振り向けたであろう人の時間とお金があると考えると、まだまだ無駄は多くあると感じます。

課題②自営業者への脆弱な制度設計

二つ目は自営業者への脆弱な制度設計です。

例えばコロナ禍での助成金・支援金などが、事業者を対象にされていたり、自営業者への給付金額が低く設定されていたりしました。従業員は雇用主と従属関係であるため保護の対象である一方、自営業者は雇用されていないため保護の対象にならないのが理由と言われています。
子供の親として身近なのが育休制度です。従業員であれば最大2年間の育児休業の取得や支援金の受給がありますが、フリーランスではありません。

近年、組織に捕らわれず起業や副業をする機運が高まっていますが、実際問題、家族を持つことや子供の教育費、親の介護を考えると企業に勤めていた方が安定という考えは否めません。
いくらアイディアややる気があっても、二の足を踏んでしまう一因にもなっていると言えます。


「海外からの高度人材」は絵に描いた餅?

したがって、まず上記2点について抜本的な改革を進めることが「競争力を高める」目的を達成するには不可欠だと考えます。その結果として、まずは日本人の意識が変わり、副産物として海外からの高度人材も誘致できるのかなと思います。
しかし、私自身はあまりこの「海外からの高度人材」は期待していません。
理由は二つあり、一つは日本人はやはりとても勤勉で真面目でよく働くと思うためです。

日本人こそ高度人材


渡英して思うのが、あらゆるサービスのレベルの低さです。不動産や修理、保険、郵便、配送、ショップやレストランなどあらゆるサービスでそれを感じます。日本であれば1日や長くても2~3日で終わるであろう依頼も、こちらでは2-3週間かかるのことがよくあります。これだけデジタル化されている社会でそのようなことが起きるのは、働く人の問題です。
一方で日本人は人力でも、何とか高いレベルのサービス提供をすることを目指します。(結果として長時間労働や顧客第一主義といった弊害が生まれていますが、ここでは一旦置いておいて。) そのため、日本は今でも経済大国として世界の上位にいます。それは紛れもなく、日本人の勤勉さや真面目さの結果だと感じます。

言語と文化の壁


また、もう一つは、実際言語や文化の問題は大きいと感じるためです。単一民族である日本の第一顧客は日本人であり、やはりその中でモノやサービスを提供するとなると日本語が第一条件だと感じます。また日本人が好む間合いの取り方は海外でも理解されにくく、外国人労働者にとっても大きな壁となります。日本は訪問するには興味深い国だと思いますが、海外の方にとって住むにはどうかと聞かれたら、正直あまりお勧めしないです。その点やはり英語が通じるアメリカやイギリス、シンガポールといった国はやはり強いなぁと思います。

以上より、競争力を高めるといった考えは大賛成ですが、その手段の一つとしての海外からの高度人材の誘致はなかなか厳しいんじゃないかなぁと思い記事にまとめてみました。

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