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【看護師を目指したきっかけ③】夫婦愛溢れる祖父の最期

小学4年生、
「看護師になる!」と決断したときのおはなし。

心に刻まれた祖父の最期

それはわたしと祖母が
癌で入院する祖父のお見舞いに行った日のこと。

"もう先は長くはないだろう"と家族全員が
察していたその日がやってきました。

———
呼吸器をつけてベッドに横たわる祖父は
わたしたちの気配に気づいたのか、
ゆっくりと目を開けます。

...祖母に向けられる視線。
...わたしに向けられる視線。
...そして再び最愛の祖母へと向けられた視線。

表情はなかったけれど、
自身の死期を悟っているようなその目は
静寂でありながらも、人間の体温を感じさせる
穏やかさをたたえていました。

そんな温かく真っ直ぐな眼差しを受けて、
切なさ、悲しさ、苦しさ、懐かしさ、愛しさなどが混同した、何とも言い難い表情を浮かべる
祖母。

時間と空間を超越した永遠の瞬間。

部屋の端から息を吞んでその様子を
見ていたわたしの瞳には、
別世界にいる二人が映っていました。

...どれほどの間視線を交わしていたのか。

次の瞬間、自らの手で呼吸器を外し、
かすれて声にならない声で祖母に向かって
懸命に何かを伝えようとする祖父。

「......。」

両手で祖父の手を包み込んだまま、
言葉が出ない祖母。
双眼にじわじわと溜まっていく涙。

...そして、
一滴、二滴とこぼれ落ちる水滴に呼応するように
紡がれる言葉。

「じいちゃん......じいちゃん...
ありがとう...ありがとう......。」

"愛し合う夫婦"としての祖父母の姿。

神聖な愛。

...気づけばわたしの視界は
とめどなく溢れる涙で滲んでいました。
———

よし、看護師になろう!

胸が締め付けられるほど感動したこの日の記憶を
忘れたくない。
病院で看護師になれば、きっと
いつでも感涙したこの日の記憶を思い出せる...!

そんな想いに手を引かれて、わたしは
祖父がこの世を去ったのを見届けると同時に
看護師になろうと決めました。


...とはいえ、実は血が大の苦手だということを
このときのわたしはまだ知りません。(苦笑)
果たして無事看護師になることは
できるのでしょうか~?

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