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「し」をかくひ

工藤直子さんの《「し」をかくひ》という詩が好きだ。

小学生2年生のとき、ひと音読惚れをしてから、ずっと好きだ。

オリジナルメロディーにのせて歌ってみたり、
みつるくん と みのむしくん を絵に描いてみたり、
へたくそな字で写経してみたりしたことがあるくらいには大好きだ。

小学6年生の国語の授業で、「好きな詩を描こう」という課題がでたときには、迷わずこれを選んだ。

まわりのクラスメイトが、宮沢賢治さんの「雨ニモマケズ」や、谷川俊太郎さんの「生きる」など、メッセージ性が強く素敵な誌を描く中、ひらがなしか使わないこの誌を選んだ私はなかなか珍しい生徒だったと思う。

しかし、あれから10年以上たっても、この詩の良さは褪せるどころかますます素敵に思えるのだから、あの頃の自分を褒め称えたいものである。

長い前置きで、ハードルをあげきったところで、ぜひ読んでみていただきたい。


「し」をかくひ

         かぜみつる

ゆうべ
くりのきのとこ とおったら、さ
みのむしのやつ ないているのさ
こわいゆめ みたのだって
まだちいさいし、な
むりないよ

おれ あしたのぶんに
とっておいた
そよかぜをだして ゆすってやった
みのむしのやつ わらってねむったぜ

あんまり かわいくて、さ
とうとう そよかぜ ぜんぶ
つかっちまって、さ
だから おれ きょう おやすみ
ひまだから「し」かいてるの


くどうなおこ 「のはらうた」より

伝わるだろうか。

8歳のわたしにもわかった、このリズム感の心地よさ。

詩全体に満ちあふれるやさしさ。

平易な且つ自然なことばで、一切の無駄なく、同時におおきな含みをもって紡がれるものがたり。

ほら、もう、耳をすませば、かぜ みつるくんが貴方の耳もとで話しかけてくるではないか。

リアル(...きこえますか...きこえますか...このnoteをよんでるあなた...今...あなたの...こころに...直接...よびかけています...)の世界である。

きこえないひとは、もう一度幼稚園くらいにタイムスリップして、のはらを転がりまわるところからはじめていただくことをおすすめする。

かぜみつるくんの唄声がきこえないのはあまりに勿体ないので。

とまぁそんなに女性にここまで語らせるほどの力を、この「し」はもっているのである。

とにもかくにも、これだけ短い詩のなかで、この上なくほほえましい世界が創られ、想像力が掻き立てられることに私は感銘をうけた。

そして、私も「し」をかきたいとおもった。


ひまだから、「し」をかいてみる


この詩の素晴らしさは前述にあげたとおりだが、
私の背中をおしたきわめつけは、さいごのパンチラインである。




ひまだから「し」かいてるの。


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ひまだから、「し」...!!!!?!



"「し」って、、、こんなかんじでかくものなんだ...!!"


8歳のわたしは思った。

それからわたしは、「し」が好きになった。

読むことも、書くことも。

詩をよんだとき、書き手のことを想像する。

これ書いた人、どんな気持ちだったのかな。

ひま、だったのかしら。


はぁ。

なんどよんでも、素晴らしい詩である。


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そんなわけで好きが高じて、
この度、オマージュ作品(と呼んでいいのか憚られるもの)をつくってしまった。

しばりは、ざっくりのリズムだけ。

のはらの住人として描く詩では、工藤直子さんや、こどもたちの「のはらうた」にかなう気がまったくしないので、わたし自身に実際に起きた話を『「し」をかくひ』のリズムにのせて、書くことにした。

多少の脚色はあるものの、すべてなんらかの事実に基づいており、
決して作品を馬鹿にしたり、100 % ふざけているわけではないことをご理解いただきたい。

わたしはただ、ひまだから「し」をかいてるのである。

それでは、はじめましょう。

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「ち」をあらうひ

ぶり ぶりこ

さっき
スーパーに かいものにいったら、さ
ブリのやつ めちゃくちゃ安くなってるのさ
50%オフ だって
買うしかない、な
そう思ったよ

おれ お気に入りの
ビジネスバッグに
ブリをいれて かえってやった
ブリのやつ そのまんまだぜ

家にかえったら、さ
ボトボト  リュック  赤い液体が
ながれだしてて、さ
だから おれ いま ふろば
ぶりの血 あらいながしてるの


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「こうぎ」のひ

ちやり すすむ

ゆうべ
さかみち自転車で くだったら、さ
けいさつのやつ とまってるのさ
とりしらべ してたのだって
もう月末だし、な
むりないよ

おれ とびきりのえがおで
えしゃくして
びゅーんと とおりすぎてやった
けいさつのやつ おれをとめるんだぜ

おいおい ここに、さ
一時停止 マーク あるの
みえないかって、さ
だから おれ きょう 講習
罰金払って 安全指導うけてるの

.

シフトのひ

はじし のぶこ

ゆうべ
よっぱらって けいたい ひらいたら、さ
けいすけのやつ ラインくれてるのさ
今日こないんですか だって
わたしになついてたし、な
むりないよ

わたし ノリノリで
ごめん〜さみしかったかぁ🥺
って返信してやった
けいすけのやつ しばらく無言だぜ

あんまり ノリがわるいから、さ
よーくみたら このけいすけって
バイト先の店長で、さ
だから わたし きょう 臨時しゅっきん
反省文 したためてるの

.

はじめてのひ

まじん ぶう

さっき
ベッドで ごろごろしてたら、さ
かれしのやつ となりにきたのさ
いとおしく おもったのだって
まだ付き合ったばかりだし、な
むりないよ

おれ うれしくなって
今までにない
かわいいこえをだして あまえてやった
かれしのやつ わらってだきしめたぜ

あんまり うれしくて、さ
ぎゅーっと したら ブーッと
屁 こいちまって、さ
だから おれ いま ふとんのなか
においとじこめて かくれてるの


けついのひ

えいこ こうし

さっき
英語のじゅぎょう してたら、さ
ひとりの生徒が したむいてるのさ
けいたい いじってたんだ
友だちが発表してるのに、な
そりゃないよ

おいら がっかりして
ちかづいて
がめんをみて はっとした
生徒のやつ 単語しらべてたんだぜ
ともだちのこと りかいしたくて、さ

とうとう おいら なにも
言えなくて、さ
だから おいら もう きめた
だれのこともきめつけないの


.

「あした」

あした
くもひとつなく はれたら、さ
うみまで あるいていかないかい
つたえたい ことがあるんだ
ふたりきりで、ね
やくそくだよ

わたし こころからの
いのりをこめて
てるてるぼうず つくってみた
あのひと まぶしそうにわらっていた

あしたの よほうは あめ
あなたの あしは うごかない
あめ ふっちゃったねぇ 
くも じゃまだねぇ
ふたりで かたを おとすなら
わたしの こころは きっとはれ


.

作者より

いかがでしたでしょうか。

8歳のわたしに、「し」の楽しさを教えてくれた、くどうなおこさんの『「し」をかくひ』。

ふと思い出して、わたしも「し」をかきたくなって、オマージュ作品(と呼んでいいのか謎)をつくってみました。

全体的にふざけた話ばかりになってしまったのは、わたしの人生がそんなかんじだからしかたないのでしょう、きっと。

ぶりをそのままバッグにいれない、LINE の宛先は確認する、交通ルールはしっかり守る...気をつけたいと思います。


でも、まぁ最後の「あした」や『けついのひ』のような作品がうまれる瞬間もあるから、人生そうわるくないです。


は〜あそんだあそんだ!

楽しかった!

また、好きな詩や物語で「オマージュと呼んでいいのか謎」シリーズ、書きたいと思います。


あ、評論家ごっこしたはいいものの、結局優勝作品を選ぶことができなかったので、よかったら皆さんのお気に入り作品(あれば...)を教えてください。


最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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#キナリ杯 #ポエム #詩   #のはらうた #教育 #言葉あそび #スキしてみて #オマージュと呼んでいいのか謎

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