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13歳のわたし

これはちょうど3年前、長女になったつもりで書いたお話。
登場人物の名前は架空ですが、実話です。
長女は7歳半からずっと反抗期、一時期の返事は「知らない」か、無視。
私は母親として子どもの反抗期に体当たりで挑んでいましたが、
どうにも上手くコミュニケーションがとれない。
そこで、長女の気持ちになってみたらどうかと思い立ち、密かにショートストーリーを書いたのです。
書いてみて、ハッとしました。
自分も13歳が一番とがっていたことを思い出しました。
13歳ってちょうど心と体が子どもから大人へと向かう途中です。
自分でも分けがわからない時期なんですよね。
現在16歳の長女は長かった反抗期も終わり、今では私以上にしっかりと家族を仕切ってくれる頼りになる存在です。
もう追い越されたことばかり。
そんな長女へのリスペクトと愛を込めて、誰にも見せたことのないショートストーリを本日初公開します。

13歳のわたし

わたし、ママがキライ。
たぶん。

妹も弟もキライ。
たぶん。

家族はパパだけでいい。
パパと話す、パパと手をつないで歩く。
それでいい。

わたしは家でも学校でも気が合う人とだけ一緒にいたい。
自分の世界をこれ以上広げたいなんて1ミリも思ってない。
それで居心地がいいなら、いいじゃん。

勉強頑張ってるでしょ?
いい成績取ってるでしょ?
自分のことはできてるでしょ?
ママなんか全然できてないことばっかりじゃん、なんか文句ありますかー?

あー、またママが吠えてる。

「ちょっとー、誰か太郎のお尻拭いてあげてー、手が離せないのー。」
「あー、無理、無理。宿題やってるから。」
「宿題なんかやらなくて結構!勉強より弟のお尻拭く方が大事だよ!」
「じゃあ、わたしが学校で先生に怒られてもいいのね?!」
「いいよ。ママが説明しに行く。」

わたしは持っていたボールペンを少し乱暴に置き、無言で席を立つ。
そして、トイレでお尻を出して無邪気に待っている太郎の元へ向かう。
もちろん、かなり不機嫌。


わたしは誰にも分かってもらえない孤独な13歳。

勉強が楽しくて邪魔されたくないのに、ウチのママときたらなーんにも分かってくれない。

「わたし、学校の勉強だけがしたいの!ウチの手伝いなんか一切やりたくない!」

ある時、勢い余って言っちゃった。
ママは鬼の様相で応戦してくるかと思ったら、意外。

「あっそ。じゃあ、そうすれば?」

え、ホントに?!
やったーっ!
遂にやりましたーっ!
勝利を勝ち取りましたーっ!

わたしは、天にも昇るルンルンな気分。
お手伝いから解放された、これで堂々と好きなだけ学校の勉強ができる!
 

夏休みが始まり、パパは長期出張で留守。
ママは一人でバタバタとウチの事をやっていた。
わたしは勝ち取った権利を堂々と行使すべく、そんなママを横目に夏休みの宿題に没頭した。
今年は大満足な夏休みだー、イエーイ!

わたしが住んでいる所は夏休みが3ヶ月ある。
夏休みの宿題は前半で終わらせたから後半は大好きな読書三昧、イエーイ!

のはずだったけど…

「ねー、おなかすいたー、ご飯まだー?」

わたしの一言でママがブチ切れた。
やばい、わたし地雷踏んじゃった?

ママはわたしに近づいてきて言った。

「あなたは自分のことはよくやってる、すごい。でも家族の姿にもっと目を向けなきゃいけない。勉強より大事なことが世の中には沢山あるよ。もしそこまで好き勝手やるなら、自分の事は全て自分でやるんだね。」

何、何、何?!
わたしはただ、おなかすいたって言っただけなんですけどー。

キョトンとしているわたしに向かってママは付け加えた。

「ママもパパも、マコも太郎もみんなウチの事やってるよ。あなたはそれを見て何とも思わないの?!残念だけど、何も分からなかったみたいだね。今日からウチの手伝いはイヤでもやってもらいますから!」

こうして夏休み後半は「斉藤家ルール」に乗っ取ったわたしにとっては無意味な日々となってしまった。
9月の新学期が待ち遠しくてしょうがなかった。


わたし、このウチがキライ。
だってママはわたしに嫌なことばかり言うし、マコと太郎は幼すぎ。
わたし、普段パパとしかほとんど話さない。
だからパパが出張中は結構キツイ。
パパ、早く帰ってきてー。

ママはわたしに何の不満があるって言うの?
言わせてもらいますけど、「言葉が足りない」ってママは言うけど、わたし、みんなと話したくないんで。

とその時、わたしは小さかった頃の自分を少しだけ思い出した。
わたしにも家族みんなと笑い転げた日々があったよなって。

家族に言いたいやさしい言葉が頭の中にはたくさんあるけど、口からどう出せばいいのかが分からないのか、そんな言葉すらもう無いのか、それすら分からない。

分かってる。
なんか一人ですごくとがってるって。

わたし、斉藤ハナ、出口の見えないトンネルに迷い込んだ孤独な13歳。
出口はどこですか?
一筋の光をずっと探し続けてる。
この暗闇から出てみんなに抱きしめてもらいたいって一番強く思っているのはきっと、わたしかもしれない…


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