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ナメクジに学ぶライフハック -ゆるくいこうぜ!-(読書感想文「ナメクジの言い分」)

前世はナメクジだった、と信じていた時がある。

ゆっくりマイペースで地べたを這う。
殻を捨て、むき出しの体でぬろぬろ生きる。
つつけばツノをふよんと引っ込め、またおずおずと出す。
(※寄生虫がいるので素手で触れないでください)

悩み多き思春期の私には、その姿がとてもいじらしく、心強く映った。

大人になってからもナメクジへの親近感は消えず、本書「ナメクジの言い分」(足立則夫著、岩波科学ライブラリー)を目にした次の瞬間には手に取っていた。

とにかくすごいナメクジ愛

本書では、著者とナメクジのほっこり馴れ初めエピソードに始まり、
・ナメクジの生態や進化の推察
・ナメクジを取り巻く人間文化
・ナメクジから学べる事
などが記されている。

著者は全国の知人に情報提供を呼びかけ、研究者に取材しながら、徐々にナメクジの足跡を明らかにしていく。(愛と探求心がすごい!)

地方や人によって、忌み嫌われたり崇められたり忙しいナメクジ。
限られたリソースを分かち合い、支え合って生きるナメクジ。
食物連鎖の底辺をキープしながら、省エネで地球の危機を生き延びてきたナメクジ。

著者のユーモラスな語り口でナメクジワンダーランドへと誘われ、なんとも愛おしい気持ちがこみあげてくる。

地に足(?)をつけてしたたかに生きる、小さな賢人。

小松菜についた1cmに満たないナメクジに叫び声をあげ、塩を振りかける前に、彼らの2億年の歩みに思いをはせたいものだ。

むき出しで生きる

ところで、私が尊敬する人々に共通するのは「むき出しの人」という点だ。
自分のネガティブな面もポジティブな面も受け入れ、素直にさらけ出して前へ進める人。

本書でも、殻を捨てて生きるナメクジに学ぼうと呼びかける。

生身の自分をさらけ出すのを避け、見せかけの殻で全身を覆うカタツムリのような人間が増えているような気がする。
(中略)そう恐れることはない。その昔、殻をぬいだナメクジは、生命体をさらけ出しながら、ゆったり我が道を歩み、地球のあちこちで自在に生きているではないか。

足立則夫「ナメクジの言い分」p.102-103 (2012年、岩波科学ライブラリー)

求められる人間像を演じなければ。
弱みを見せたら負けだ。
良く見せたい、嫌われたくない、傷つきたくない。

そんな思いにがんじがらめになり、誰かに相談するという発想もなく、殻の中で一人もがいていた頃。
ああ、だからナメクジに救われたのか…!
10年以上たって、点と点がつながりました。

事実は小説より奇なり

最近は小説よりも、こうした科学系や実用書を読むことが多い。
けれど変わらずワクワクするのは、解説されている内容に加え、著者の気持ちや人柄、歩んできた人生がにじみ出ているからだと思う。

人間って面白い。そして、ナメクジも。
生き物それぞれの中に、宇宙が広がっている。
私はそれを愛おしいと思う。

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