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【エッセイ】願わくは、我に七難八苦を与え給へ

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祖父危篤の報を聞いてから駆けつけ、葬儀に出るまでの数日間を綴った話です。苦難の時代を生きた祖父の生涯と、夏の空に思いを寄せて書きました。
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#回想

【追想】亡き祖父に寄せて「願わくは、我に七難八苦を与え給へ」第1回

茹だるような7月のある日、いつものように残業を終え、汗をかきながら帰宅してLINEを見ると、母から連絡が入っていた。

「入院している祖父が危篤です。今晩が最期になるかもしれません。」

私はそもそも祖父が入院していることすら知らなかった。あまりに突然だったので、どう反応していいか分からなくなって、しばらく返答に迷ってしまった。兎にも角にも、今晩が最期かもしれないのだ。行かなければならないだろう。

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