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平凡な男が神託を得て疾走するアクション・スリラー「ベケット」

 旅行者であるごく普通の一般的なアメリカ人・ベケットがギリシャで起こしてしまった出来事により、何故か警察に命を狙われ戸惑いながらも逃げるが・・・。言葉も分からない異国の地で理由も分からず追われる、というのは大変な恐怖だ。見ている方も主人公同様に終始ハラハラ。ベケットは逃走しながら徐々に追われる理由を探っていくが、そこにはギリシャの不安定な政治情勢や経済状況が絡んでくる。この辺りいかんせんギリシャ情勢には詳しくないので、あらすじをフワッと追うので精一杯になってしまったのが残念。

※オチは書いてないが、ここから一部ネタバレ※



 ジョン・D・ワシントンがあまりに手慣れた動きや素早い判断で逃げる姿は、一介のプログラマーと思えない凄さで正直笑ってしまったが、合間で一息付いた瞬間に恐怖に震えたり涙したりするシーンは、どちらかというと妻に守られていた大人しい男性というベケットの人間性がかいま見えて母性がくすぐられた。冒頭でエイプリルの枕元にあるメモや、古代ギリシャの神託所デルポイから映画が始まることにも象徴的なように、これは一人の受動的な男が神託(個人の経験により神からもたらされる幸運、不運)によって能動的な行動を起こす事がテーマとなっているのが分かる。自身が起こした出来事に対する贖罪のように決死の覚悟で戦いを挑む最終局面には感動すら覚えた。ベケットの最後の言葉が切ない。誰もがいつ何時彼のようになるか分からないのだから・・・。

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