テレワークのやり方、私の場合

私がやりとりしている出版社も次々とテレワークに入っている。

もっとも早かったのはある外資系の出版社で、2月の終わりにはテレワークを導入した。まだ音楽関係のライブも行われたりもしていた時期だったのでちょっと驚いたけれど、あれが正解だったんだなあと思う。そして、4月初めの現在、すべてではないにせよ会社にいる時間を可能な限り少なくして在宅でできることは在宅で、という出版社も増えてきた。出版でなくても、テレワークを取り入れ始めた会社及び人は多いだろう。

さきほど友人からLINEがきて、「息がつまる〜」とあった。彼女も夫も在宅に切り替わって、戸惑っているようだ。似たような声をいくつも聞く。

物書きの私は元々がテレワークみたいなもん。なので、生活は大して変わっていない。たまにある夜の会食がなくなったぐらいで、昼間の生活は普段と同じである。そこで、私の仕事の仕方をここに書いておこうと思う。仕事の特殊性はあるかもしれないけれど、何かの参考になればと考えたのだ。

私は文章を書く、物語を作るという仕事をしている。気がつけばもう30年近くのベテランだ。それなりに長いこと、紆余曲折しながら自分の中の少ない集中力を効果的に引き出せる方法を模索してきた。今もしている。文章を書くという作業はかなりの集中力が必要だし、ましてや物語を作るには心の中だけそこにワープしなければならない。本当に気が散りやすいので、いわゆる「のってくる」「おりてくる」状態に自分を持っていくまでが大変だ。

仕事用にわざわざ部屋を借りて、自宅からそこに通うというスタイルをとったこともあるけれど、今はベッドルームの向かいの部屋が仕事場だ。出勤は二歩のみ。メリハリつけるのがむずかしい。

起きる時間はついまちまちになってしまうが、なるべく午前10〜11時の間にはパソコンの前に座るようにしている。その際、豆を挽いてドリップしたコーヒーと水を用意する。マグカップとグラスは気に入っているものがいくつかあって、それらの中からその日の気分で選ぶ。その二つをお盆に乗せてサイドテーブルみたいなところに置く。要は儀式である。さあ、これから原稿を書くんだよ、私は、と自分に言い聞かせるための。

テニスのラファエル・ナダルがサーブを打つ時とかイチローが打席に入った時とか、そういうのをイメージさせているのだ、自分に。笑っちゃうかもしれないけれど、編集者は会社にいるし、読者はページの向こうにいるから、自分で自分を盛り上げているわけ。それでも誰も見ていないから、マグカップの中身が半分くらいになって冷めつつある頃ぐらいまではネットサーフィンとかしちゃうよね。ほんと、集中力ないもん。

そういう時のために、パソコンの横に本を何冊か積んでおく。自分の書いたものとこれまで読んで好きなものと。新しく読むのは主にベッドの横。こっちに置いてあるのは、ぱらっとめくるだけの既読の本。まだ自分の中に書いてないことあるでしょ、というのと、早く書かないと誰かが書いちゃうよ、という脅しのために。ちなみに私の仕事用のデスクはただの長い板に足を6本つけてもらったもので、いろんなものがのっている。まったくおしゃれじゃない机で、ロッシュボボアがどうたらこうたらとか書いている。うーん、参考にならないか、こんなんじゃ。

もっと参考にならないかもしれないが、集中力も週単位ぐらいで考えるといいと思う。毎日コツコツ書かなければ一昨にも一冊にもならないけれど、やっぱり波はあった方がリズムが出る。のってきた、という手応えがあったら、食事の質はあきらめる。運動は後日まとめてする。見たいテレビは録画する。LINEも既読スルーする。髪がぐしゃぐしゃでも爪や指がささくれだっていてもそのまま。ここを逃したらヤバいと思うと、そういうことは気にならなくなる。これぞテレワークの醍醐味である。普段は頭が冴えちゃって眠れなくなると困るので、20時か21時くらいまでには書くのを止めるけれど、こういう時は時計の数字は気にしない。夜中でも明け方でも書く。その状態が一日のこともあれば、五日間ぐらいのことがあるけれど、あんまり長く続けないのもコツ。いや、続けられない、が正しいだろう。

で、そういう汚ったない時期を乗り切ったら、うんと自分を甘やかす。こちらは得意なんで、私。引き続き汚ったないままでずーっと映画見たり本を読んだり。でも、原稿は一切書かない。もしくは身体が鈍ってるなあと思ったらジョギングしたりゴルフに行ったり。で、こっちの場合も書かない。

ますます参考にならなくなってきた。つまりは「毎日コツコツ」と「リズムをつける」を自分なりに飼いならすといいよ、ということが伝えたかった。これって何事にも通じないかしらん。

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作家。小説やエッセイを書いています。テーマは、女性の生き方だったり、鎌倉の暮らしや情報だったり、興味の赴くまままに書いています。バブルの語り部です。著作は『鎌倉の家』『産む、産まない、産めない』『産まなくても、産めなくても』『エストロゲン』『マラソン・ウーマン』などなど。

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