いろいろな出会い

　人との出会いって、あらかじめメイキングできないことのうちの一つだ。

　仕事をしている時には、属する組織がプラットフォームとなって、多くの出会いがあった。退職してプラットフォームがなくなった今、向こうから舞い込んでくることはなくなり、出会いは自ら求めなければ、手に入れることが難しくなった。

　そのことに自覚的ではなかったけれど、退職後に大学の社会人履修コースを申し込んでおいたことは、今となっては良いチョイスだったと思う。開講以降、いろいろな人との出会いがあって、周りの人間関係が一変した。

　これからは地域のコミュニティづくりに携わりたいと考えている私は、これまでコネクションのあった医療関係者とはまったく別のところに手を伸ばし始めた。もちろん、医療と地域コミュニティは切り離せないものであり、そこを徐々にゆるくリンクさせていきたいと考えているので、いずれはまたこれまでのコネクションとも再びつながることになるだろうけれど、とりあえず今は地域で新しいコネクションを模索していかなければならない。

　というわけで、大学で学びながらも触手を伸ばして「これだ！」と思う人に会いに行くようにしている。でも「これだ！」と思うのはこちらばかりで、つまり片思いのような状態で会いに行くので、その後の展開や相手の反応は必ずしも自分の思うようにはいかない。そういう意味で、出会いを(自分のイメージするように）メイキングするのは難しいってこと。

　それでも、中には『いい感じの出会い』もあって、そういう場合には相手のレスポンスが速い。そして好感触。
　たぶんオープンマインドの加減がよく似ていて、よく似た言葉づかいをする相手なんだろうと思う。

　先月末、初めて会った人がそうだった。会った後にも連絡が来て、やり取りをしているうちに、私の先輩（大学の社会人コースのＯＢ）がその人の仲間にいることが分かり、「また今度、あらためて紹介しますね！」と数珠つなぎに縁が展開していく感触があった。

　「ああ、今後、私はこのコミュニティに深く関わっていくことになるのかもしれない」

　そう感じるような出会いだった。ものごとが展開する時には、まるで川面に飛び石が配置されているかのように、とんとん拍子で進んでいく。一方、縁がないものは、どう頑張ってもうまく進んでいかない。だからといって、悪縁というわけではなく、何年か先にまたつながったりすることもあるので、「今じゃない」というだけなのかもしれないけど。

　ともかく今月の下旬に、そのコミュニティに正式に入れてもらう段取りになっている。それが私の仕事とどういう接点を持っていくのかはまだ分からないけど、良い匂いのするほうへ動いていきたいと思う。
　お金の匂いのする方へ、ではなくて(笑)。

　その人との出会いがあってから、それまでに出会っていた人との縁を見直すことにもなった。ここでいう“見直す”というのは、切り離すとか付き合いをやめるとかそういうことではなく、これまでとは別の、良い意味を発見したというか。「ああ、そういうことか。あの人はこういう接点で付き合っていけばいいんだな」みたいな、新しい視点を得たというか。
　なに言ってるか、分かんないよね。すみません。

　直接的に書けないので、例えを出すとすると…

　自分が妊娠したことによって、子育てというものが自分の視野に入ってきて、「そういえば、あの人、子育てサークルをやっているって言ってたなぁ」と思い出して、それまで積極的に交流していなかった人に久々に連絡を取ってみる、みたいな感じ。
　単なる知り合い程度だった人との縁が、妊娠（子どもの誕生）をきっかけにこれまでとは違った風に動き出すというのは、付き合いかたのポジティブな見直しになると思うんだけど、そういう感じかな。

　新しい出会いによって、これまでの人間関係を切っていくみたいなことは、どちらかというと閉じていく方向で、依存とか洗脳とかに近いものだと思うんだけど、ここでいう見直しは逆に新しい可能性に開かれていく類のものなんだ。

　そういう出会いにたどり着けたことは、私にとって幸運だと思う。この縁が私をどこに連れて行ってくれるのか。

　まだまだ出会わないといけない（と私が勝手に思っている）人たちがいる。それぞれの縁の延長線が交わっていると楽しいな。私はこのＲＰＧを楽しみ始めている。