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小鳥遊大史の弱点

 今期の連続ドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」が来週最終回を迎える。タイトルの通りヒロインは大豆田とわ子(松たか子)で、3回の離婚歴がある。で、物語の後半に出てくる謎の男性が小鳥遊大史(たかなしひろし/オダギリ・ジョー)だ。お互い独身で、数学好きで、感性もどこか似ていて…という二人は急接近する。

 そして前回の放送で、小鳥遊はとわ子に「人生のパートナーになってほしい」とプロポーズをする。小鳥遊は今の仕事を辞めて、マレーシアの友人の事業を手伝う予定だと話す。そこでは、とわ子が生きがいとしている設計の仕事もあるはずだという話や、すでに向こうの会社が用意してくれた邸宅の写真を見せたりする。そのどれもが魅力的で、思わず浮かれるとわ子。

 とわ子の嬉しそうな感じからすると、小鳥遊のプロポーズは成功したかのように見えた。でも、最終的にとわ子は断って、日本に残ることを選ぶ。なぜ小鳥遊のプロポーズは失敗したのだろうか。私はそう思ったし、そう思った視聴者も多かったんじゃないかな。

 劇中ではその後、とわ子は一番目の夫・田中八作(松田龍平)のところに行き、お互いに両思いであることを確認する。だから小鳥遊のプロポーズを断ったのは八作への想いがあったからだ、という風に見える。

 もちろんその部分も大きいんだろうけれど、私は小鳥遊のプロポーズ&プレゼンが完璧すぎたのが原因かもしれないと思ったりする。そして、それはきっと小鳥遊の弱さなのだと。

 人生のパートナーと言いつつ、小鳥遊はとわ子に完璧なプランを提案してしまっている。結婚って、誰かの隙のないプランにすっぽり包まれてしまうことではない。小鳥遊は不安だったし、断られることも薄々分かっていたんじゃないかな。不安な人ほど、用意周到になるし、よくしゃべる。小鳥遊のプロポーズはどこかそんな感じがして、私は少し哀しかった。

 とわ子のこれまでの夫たちは、みんなどこかに弱さとゆがみを抱えていて、でも、それゆえに愛らしい。そういう意味では、小鳥遊だって(他の夫たちよりも分かりにくいけれど)弱さとゆがみを抱えている。そこをとわ子は最終的には受け入れなかった。それがとわ子という人間の弱さであり、強さなのだ。

 「ママは自分で思っているほど強い人間じゃないよ」という娘の言葉。

 「一人でいるのが寂しいのよ」というとわ子の本音。

 どれも胸に刺さる。だけど、小鳥遊を選ばず、八作にも(結婚という形でなく)一緒に生きて行こうと提案するとわ子。

 最終回はどうなるのか。このドラマは新しい「おひとりさま」のありかたを提示している。そんな期待をしつつ、来週を楽しみにしている。

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