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精神障がい当事者の就労では、支援は続いている方がよい

精神障がい当事者の就労では、支援は続いている方がよい
(「精神障がい当事者の就労支援あれこれ」シリーズ#47)

 精神障がい当事者への就労支援の「魅力と課題」を記すシリーズです。精神障がい当事者の方々にとっての、職場定着・就労継続の難しさと、健やかに働き続ける工夫などをまとめています。

 ここまで、精神障がい当事者の方が健やかに「働き続ける」(職場定着・就労継続)ために大切なことを、
・精神障がいの特徴そのもの
・準備不足でないか
・マッチングの問題はないか

という観点からご説明してきました。

 今回は、「支援は続いている方がよい」ということについてお話しします。

 病気・障がいと付き合いつつ働き始める(働き続ける)皆様への、エールのつもりでまとめています。どうぞご覧ください。

1.一般的に、支援はあったほうがよい

 のっけから、しごく当然なことを申し上げるのは、私たちは「自分でするべきだ(安易に他人に頼ってはいけない)」という通念に、案外縛られ続けているものだと思うからです。いわゆる「自己責任論」です。ですから、改めて「支援はあったほうがよい」と、明言しておきます。

 就労移行支援事業所などを利用し、職業訓練を受けている方は、特に「自分でできるようにならなければならない(そのように訓練しなければならない)」と思い込んでいないでしょうか。

 もちろん、自分でできるに越したことはなく、その幅が拡がるのはよいことです。併せて、自分が苦手なこと・できないことを理解し(できれば、同僚が苦手なこと・できないことをも理解し)、サポートされる(時にはサポートする)、という構えでいるのがよいでしょう。

 公的な支援(福祉サービスなど)だけでなく、職場ではさりげないサポートが常に交換されているものなのです。例えば、子育て中の社員さんが残業できない分、周囲がカバーするのは、至極当然のことです。

2.就労と生活の垣根は、しだいにあいまいになってゆく

 ところで、就労に向けてあんなにしっかりと訓練したのに、働き続けるのが難しいのはなぜなのか、当事者目線で再確認してみようと思います。

 ひとつは、就職を果たし、働き始めたことでほっとして、脱力してしまうケースが多いと思われます。俗にいう「五月病」(心理学者っぽい表現をすれば「初頭努力の減衰」)のようなものです。

 もうひとつは、就労したことによる生活の変化、もしくは生活の変化が就労におよぼす影響が考えられます。例えば、それまでつましい生活をしていた人が、給料を手にして浪費するようになってしまい、生活のバランスを崩してしまう、といったような場合や、恋愛や結婚によって、就労への動機づけが下がってしまう(逆に張り切り過ぎて、負荷がかかりすぎてしまう)、などといった状況がありうるでしょう。

 働き続けるうちに、このように、就労と生活の垣根は、しだいにあいまいになっていくと思います。働き続けるための支援は、生活への支援と不可分のものになっていくのです。

3.就労後も支援が続くことで、雇用側も安心できる

 精神障がい当事者の就労支援では、就労後も支援が続くことで、当事者だけでなく雇用側も安心できる、といった事情があると思います。

 精神障がいの特徴として、調子の波があること、個人差が大きいことを、過去記事で指摘しました。

 精神障がい当事者の方が働き続けるなかで、職場で調子を崩していないか心配な局面があれば、その理解と対応は”個別に”工夫しないといけません(マニュアル通りの通り一遍の対応では、うまくいかないことが多い)。そんな時に雇用側にとっては、相談できる支援者・専門家がいることは心強く、支援者・専門家によるサポートのもとで適切に対応できることにより、不本意な離職を回避できる可能性も高まります。

 障害者総合支援法の障害福祉サービスでは、就労移行支援事業所でも就職後のアフターケアを行うことが求められていますし、「就労継続支援」(という事業名)を行う事業所も増えています。障害者就業・生活支援センター(いわゆる「ナカポツ」「就ポツ」)などの相談窓口を活用することもできます。当事者の方も雇用側も、このような支援を積極的に活用するとよいでしょう。

(おわり)

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