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近藤史恵さんの『歌舞伎座の怪紳士』で歌舞伎を楽しみつつの読書体験

近藤史恵さんの『歌舞伎座の怪紳士』
タイトルだけですと、あのジャーン!ジャジャジャ~♪な「オペラ座の怪人」の音楽が脳内に鳴り響きますが、いや、そうではなく。

主人公久澄は、新入社員として入った会社でのとあることがきっかけでパニック障害を起こし、自称「自宅警備員」の生活を送っています。
そんなある日祖母が「代わりにいってほしい」と歌舞伎座のチケットをくれるんですね。そこから久澄の人生が動き始めます。
動き始めますって書きましたが、その前だって自宅で無職だったとしても動いていなかったわけではないといえましょうが。

ミステリー要素もありながら、優しい気持ちになれる内容。
なによりも、歌舞伎座の怪紳士であるところの堀口さんが、久澄に言うセリフがとても良い。引用します。

「ひとつ覚えておくといいですよ。誰かがあなたを責めようとして発することばは、自分がいちばん言われたくないことばですよ。」

そしてさらにすごいのは、久澄は自分も嫌な気持ちになりながら、その根底にある(自分も相手が嫌だと思う態度などをとっていたのかもしれない)と思うのです。
主人公を含め、読者ってだいたい「言われたらいや、あの人ちょっと。」って気持ちになりがちではないでしょうか。でも、ここでは「言われたけれど自分もそう言わせる原因を作っていたのでは。」と考えるのです。

なんということ。
また、歌舞伎を含め観劇に目覚める久澄の、舞台を観たときの感想がまた良いのです。
歌舞伎が大好きな私としては、そうそう!と一緒に観劇しているような気分になり、客席の雰囲気が目の前に立ち上がるように楽しめます。
「これって、玉三郎を想定してる?」とか「弁天小僧は誰?」なんて考えるのもまた、違った楽しみ方。

この本も面白かったし、それとはまた別に歌舞伎もまた観に行きたくなりました。
今ならKindleUnlimitedでも読めます。



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