見出し画像

『面白い』という言葉からの雑考

清少納言といえば『枕草子』
その内容は、大きく三つに分けられるということですが、私の印象に残っているのはやはり
いとをかし、で述べられる部分です。

当時の言葉で、心を動かされたりすると使う美しいとか素晴らしいとか、可愛いとか色々な意味で使われていて、高校生の時現代語訳を読んで、なるほどねーと思った記憶があります。

今の時代ですと、ヤバいという言葉が良い場合にも使われたり広義の使われ方をして、言葉ってどんどん太っていくんだなと感じてますが。

面白い、という言葉もなかなか広い意味を含むな、と時々思います。

以前亡くなった義母が、私に話してくれたことがありました。
結婚して全く知らない土地である広島に住むことになった義母。お盆の頃に、ふとお寺さんを見ると見たことのないカラフルな燈籠が立てられています。
あれは何だろう?と思って、どなたかに尋ねたら盆燈籠というものだということを教えてもらったそうです。

新盆ですと白いものを飾るそうです。
私も帰省した時に何度か見たことがあります。

で義母の話です。
それを伺った時に、面白いですね、と言ったそうなのです。
すると教えてくださった方が、
面白いだなんて失礼な言い方ですね、ここの慣習なんですよ、おかしくはないでしょう?
と義母に言ったそうです。

義母は、驚いて言い返せなかったそうです。
ここまで読んでくださったかたは、もうお気づきですよね。

面白いという言葉をおかしいという意味ではなく、興味深いという意味で使った義母。
しかしその面白いを、笑いを誘引するようなおかしい、または変、という意味で受け取った相手。
面白いという言葉の概念が、その場で行き違いが生じてしまったわけです。

どちらのことも責められないけれども、その会話相手との信頼関係というか相手をよく知っていたならば、こんな時にこんな意味で言う人ではない、という理解もあるのかな、とも考えます。
また、義母にしてみれば、30年以上前の事を私に話すほど心に刻まれていた出来事だったのです。お嬢様育ちの義母が、知り合いもいない場所でいかに心細い毎日を送っていたことか、とその頃の気持ちを思います。
ほんのひとことの、言葉1つでもそれだけ人の心に残ってしまうような。

では、どのように言えば誤解がなかったのでしょう。
私の育った場所では見たことがなかったので、興味深いですね。かな?
これもなんか違う。
勉強になりました。とか?
的確な言葉を咄嗟に使うって難しいですね。

言い換えるスキルを身につけることも大切なのかもしれません。

言葉って自分が頻繁に使う語彙から咄嗟に出てきますから、その枠を大きめにとれるような努力が必要なのかもしれません。

面白い、という言葉は私もよく使いますが、
興味深い、という意味で使うことがとても多いです。
義母の話を聞いてから、面白い、を使った時に
興味深いという意味での面白さを感じますね、と言ったりもしています。
面倒な人になりかけてますかね。

ですから先ほどの自分の言葉の枠を大きくしなきゃな、と思うわけです。
そして言葉は使わないと身につきません。
よく生徒さんにも新しく出会った言葉は、使うようにすると良いよ、と話しています。

言葉は、その人を理解もできるけれど、傷つけたりもする、ということを忘れずに生きたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?