一穂ミチ『うたかたモザイク』たくさんの世界観がどこか寂しくもある
一穂ミチ氏の『うたかたモザイク』を読んだ。
短編集。どこかに連載されていたものと書き下ろしたものが入っているらしい。
またまた初読み作家さんなのだ。一穂ミチ氏。
そんな場合、全く何の前情報も得ずに内容と向き合う。
なぜかパラレルワールドという言葉は使いたくない想いにとらわれる。
現実感もありながらどこか観念的。
描きたい世界があって、それを断片的に切り取って表現しているのかな。
そう、シチュエーションを書きたい作者の実験を隣で見ているような感覚。
作者は彼ら登場人物の背景をよくわかっているから、そのうちいくつかを断片を切ってみせてくれている。
世界をBLスタンダードに変えてしまう天才の話。
人魚なんだよね、と実証しようと秘宝館に行く恋人の話。
真っ赤なソファの独白。
全て心の奥底から出てくる、絞り出すような叫び声は封印されている。書かれていない。
多分意識的に避けられている。
だから私は、寄り添いながらもどこか寂しく感じるのかもしれない。
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