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東洋の化粧品王をかいた、高殿円さんの『コスメの王様』

高殿円さんの『コスメの王様』を読みました。
実在の人物の一代記(フィクション)。

ときは明治。
1人の少年が、大銀杏の足元のどぶにはまって気を失います。
15歳の利一、それを助けたのは花街のおちょぼ、ハナ12歳。
2人の運命的な出会いです。
利一はその後、苦労をしながらも明るく商売人として成長します。
そして、みなが使っている白粉には鉛が含まれていて、それによって病気を引き起こすことを知り、鉛害のない白粉づくりをするのです。
それを皮切りに大きくなっていく利一の会社。
牛より安い値段で売られたハナは、持ち前のけいこ熱心さと美貌で神戸花隈の人気芸妓となります。
2人は惹かれあっているのですが、添うことはできるのでしょうか。

また時代の波が、会社経営の利一を呑み込んでいきます。
そして迎えた終戦。
老いた利一が自分の人生を振り返って慟哭する場面は、熱いです。
軽やかに自分のやりたいことを追求しているかのように見えつつも、その寂しさ、求め続けた真心のありかについて考えてしまいます。

モデルとなった人物「中山太一」氏については、今も続く会社、クラブコスメチックスのHPにも紹介されていました。

化粧品を身を守るものとして作り続けようとした姿勢に、とても共感します。
贅沢品ではないのだ、という感覚。嬉しいです。
そして、芸妓としての自分は本当の自分じゃないと、心を押し込めていたところから、自分を解放していくハナの姿はさわやかで、羨ましくもあります。

時代によって、生き方が異なるのは仕方ないとしても、自分をしっかり見つめて生きていくという姿勢は変わらないのだと思います。


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