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君のためにできること。【ショートショートぽん】

たんぽぽの半濁点を吹き飛ばす|前川あすかさん

春になりました。
たんぽぽたちは一斉に空へ旅立ちます。

そんな中で、ひとつだけ、
まだ飛べない綿毛がいました。


🌼「まだ飛びたくない…ここにみんなと一緒にいたい…」



その時、柔らかな風が吹きました。

綿毛を飛ばすほどではありません。
ふと見上げると、何かが空を飛んできます。


吹く風に空を眺めて君想い 時越えて届く花のたより|丸家れいさん

🌼「花びらさん、どこへいくの?」

🌸「私たち、綺麗に咲いて、散って、みんなからたくさんの想いをもらったの。だから、今からその想いを届けにいくのよ」

桜の花びらは気持ちよさそうに飛んでいきます。

🌼「そっかぁ、気をつけていってらっしゃい。またね😊」



少しすると、また風が吹きました。
今度はなにやら楽しそうな歌が聞こえてきます。


音程の外れし歌よ春の空|くーや。さん

🌼「音符さん、どこへいくの?」

🎵「は〜るの〜うららの〜♫  私は春を呼ぶ歌を歌ってるの。いっぱいチューリップを咲かせたから、次に咲く番のお花を探しにいくわ」


🌼「そっかぁ、気をつけていってらっしゃい。またね😊」



少しすると、今度はぴゅるん!と風が高く上がりました。

重力に抗い巣立鳥よ飛べ|せきぞう、さん

🌼「つばめさん、どこへいくの?」

🦜「私、春になったからおうちに帰るの。そこでね、好きな人と一緒に暮らすのよ。子供もたくさん育てたいなぁ☺️」

🌼「そっかぁ、素敵な家族を作ってね。またね😊」


夕暮れになってきました。

誰もいない野原に、たんぽぽはひとりぼっち。


だってみんな、忙しそうなんだもの。 

みんな、やりたいことがあるんだもん。


このままここにいたい、なんて私のワガママなのかなぁ..😞



立ちこめる春の息吹が眩しくて座り込むわれに花びらひとつ|佐竹紫円さん

すると、どこからか泣き声が聞こえてきました。

たんぽぽが辺りを見渡すと、
小さな女の子が原っぱの向こう側で泣いています。

たんぽぽがいくら首を振っても、精一杯伸ばしても、女の子までは届きません。


🌼「どうしよう…」

辺りはどんどん暗くなってきます。
このままでは、この子は家に帰れず迷子になってしまうかもしれません。


でも、でも、私にできることなんて、、

…本当にないのかな?

わたしと同じひとりぼっちのこの子のために、
なにかしてあげたい。

もう、どうして私、ここから動けないんだろう…!


急に止む風がやさしくエスコート|オラヴ153さん

その時、優しく、だけどいつもより強めに風が吹きました。


🌼「あっ!」


たんぽぽの綿毛たちは一斉に飛び立ちました。

風は女の子の方に向かっています。
まだ残っていた夕暮れの日差しが降り注いで、綿毛たちはキラキラ輝いていました。

👧「わぁ、キラキラしてる!きれーい✨」

女の子は顔を上げると、たんぽぽの綿毛を追いかけていきます。どうやら女の子の家の方向に向かっているみたいです。


桜東風パーカーフードの花弁居る|しろくまきりんさん

ふと見ると、女の子のパーカーに桜の花びらが一枚乗っていました。綿毛たちはクスクス笑い出します。

🌼「そっかぁ、いっしょだね。寂しくないね」

🌸「うん、寂しくないよ❗️」

綿毛たちは女の子が家に帰ったのを見送って、
さらに風に乗って飛び立ちました。

この広い空、この先どんな出会いが待ち受けてるのか胸を膨らませながら、ピンクと水色に染まる空に吸い込まれるように消えていきました。



※友情出演
風の精•カティ




春は旅立ちの季節。

素敵な作品を使わせて頂いた皆様、ありがとうございました。



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