マガジンのカバー画像

掃き溜めの猫

3
詩集Ⅱ
運営しているクリエイター

2015年6月の記事一覧

家出娘

気まぐれな雨に濡れた
ブランコに腰かけて
スカートの襞を濡らす
彼女の知る孤独

覚えたての煙草と
不似合いな前髪の
拒んだ愛情が
潜んだこの街で

赤い鉄棒
青い滑り台
すべては他人事

痩せた手の中に
つよがり隠して
涙をこらえても
迎えはまだ来ない

掃き溜めの猫

少女は馬車に乗って
夜の虹を探している

目蓋を持ち上げれば
それは消えてしまう

誰もいない冬
僻地に降る雨が
微睡みながら
彼女を夢見ている

廃屋の暗がりには
蜘蛛の巣がめぐり
湿った木の葉を
時が腐らせる

雨はかなしい
遠い日に恋した少女は
もういないのだから

掃き溜めに迷い込んだ
行く宛てのない仔猫が
そっと雨を舐める