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綿矢りさ著:夢を与える 読了 感想。ネタバレなし。

綿矢りさ著:夢を与える 読了 感想。

全体的に重苦しい雰囲気で展開が進んでいきます。重苦しいというのは文字数が多くていらない描写が多いのではないかととても勘繰りたくなるくらい読みづらいというのがまず感想としてあります。気になったことを3点にまとめてみました。

  1. 綿矢りさの苦悩

  2. 心理描写が著者のトラウマ

  3. 男ってサイテー

綿矢りさの苦悩

この小説から綿矢りさの苦悩が読み取れるくらいに練りに練って味が濃くなったカレーのように濃くなりすぎたな。というのが素直に思うところです。

芥川賞を取って第一作目だと思うのですが、芥川賞を受賞したことによる世間からの重圧や期待感は綿矢りささんにとってかなりプレッシャーだったのだろうということがこの「夢を与える」という小説からヒシヒシと伝わります。

冒頭にも書きましたが、文字数が多い、いらない描写が多いことによってとても読みづらい小説になっています。2024年現在の綿矢りさ小説とはPOPで読みやすく、無駄な描写が少ないという印象ですが、この小説は大作にしないとという重圧から文章をこねくり回して練ってねってやっと出来上がりました!皆さんどうですか?という感想まで求めてきそうな印象をうけました。

10代で芥川賞、さらに村上龍以来?のミリオンベストセラー作家になったという重圧は彼女の中で次は絶対にいいものを書かないとという思いで執筆したのだと思います。<違っていたらごめんなさい!感想です!>

心理描写は彼女のトラウマ?

小説というものは性的なことを書き綴るような俗っぽいものだと思います。伝えたい思いがあるということも執筆するときに大事なことだと思いますが、文字にして性的なことを伝えるということで人気になった作家は近代以降多くいる印象です。

前のnoteでも触れましたが、主人公のパパが住んでいるアパートに浮気相手と思しき人間が住んでおり、母と一緒に乗り込んでいく場面があるのですが、この付き合っているあるいは、結婚相手が彼女を匿っている場所に乗り込んでいくという場面は「かわいそうだね?」にもあってこの描写は綿矢りささんのなんというかかなりセンシティブなところを通っているからこそ重複するのかなと思います。あるいは綿矢りささんの友達から聞いた話か、とても思いがこもっていてもはやトラウマレベルなのかな?と勘繰りたくなるほどに場面が肉薄しています。

「かわいそうだね?」ではもっとポップに爽快に読むことができますが、「夢を与える」では、爽快さというよりも重々しさが伝わってきました。

男ってサイテー

今回の主人公はチャイドルとして子役からCMにて芸能界デビュー。芸能界の清純派ニュースターとして着実に階段を上っていきます。しかし、ダンサーの男に恋をして芸能界での活躍というものが音を立てて崩れていく成り上がり崩壊ともいえるような小説です。

総じて言えるのは男ってサイテーだということです。ネタバレになるようなことは控えますが、芸能界で清純派のニュースターとしてうりだされているにも関わらず、やることが節操がありません。彼女のことを大切にするということよりも自分の内側に持っている欲望を主人公にぶつけるだけのダンサー。結末からして男ってサイテーだという感想をもちました。

どんな男なら正解なのか自分にも教えてほしいです。彼女ならもっと大切にしてほしい!大切にしてくれる人と一緒にいるべきだ!!と熱くなってしまいますが、大体、女性が恋愛して好きになる男はろくでもない男であるという落ちからすると順当な結果なのかもしれません。

大恋愛は不幸になるけど、打算的な恋愛はそこそこ幸せになる。こんな言葉が思い当たります。

まとめ

非常に読みにくい小説でしたが、最終的には綿矢りささんの展開力にて後になればなるほど面白い展開になります。彼女のまとめ力はすごい!繰り返すようですが、読みにくい読みにくいといっていますが、この読みにくさをなぜ読みにくいのか、文字数が多くなってしまっているのかを考察すると綿矢りささんの歴史を研究できているようで<しったかぶりで間違った解釈かもしれませんが>また違った角度から綿矢りさを覗くようで面白かったです。

ぜひぜひ皆様読んでみてください!

ではでは。

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