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短編小説🍸映画BARローマの休日(2)
「そうなんだ?結局どんな仕事を選んだの?」
彼女は重ねて尋ねてくる。
そうだ、彼女には仕事の相談をしていたんだった。前の会社を辞めたときにアドバイスを求め、それっきりになっていた。
「君の言うとおりnoteでエッセイを書いたら、これがバズってね。今はBRUTUSに週に一回連載を持ってるよ。」
「へぇ、やっぱりあれ、あなただったんだ。」
彼女が僕の連載を読んでいたことに軽く驚いたが、なんでもない振りをした。
「お待たせしました。USです。」
マスターがノンアルコールカクテルを差し出した。ピンク色に輝く液体の中に、ハサミが入っている。
「それ、美味しいよね。」
と彼女は言った。手にはカルーアミルクのような飲み物をもっている。ほんのりピンクがかっていて、ミルクの上にはよく見ると薔薇の花弁がのっており、なんとも色っぽい。
そのままなんとなしに彼女の口元を見つめていると、ふと彼女の手がこちらにのびてきた。
「ね、それどんな味?私も久しぶりに飲みたくなった。」
「さっき、それ美味しいよね、って言ってたのに?」
彼女のペースにハマると危険だ。以前もいつの間にか2人でホテルに入っていたことを思い出す。距離をつめられないように、身体を彼女と反対方向へ向けた。
「なに?なんでそっち向いちゃうの?」
彼女が耳たぶに触れてくる。くやしいが、気持ちいい。ノンアルコールカクテルを飲んでいるはずなのに、身体が熱くなるのを感じる。
「マスターもいるんだから、手を離して。」
軽く牽制するが、彼女はお構いなしに耳や頬に触れてくる。このBARの絶妙な狭さが、2人を甘いムードに持っていく。
「他にお客様もいませんし、構いませんよ。」
とマスターは再びクスッとしながら、僕にとっては困ることを平気で言ってのける。
「ありがとう、とっきー。」
彼女は不敵に笑った。
(3)へつづく
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