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崩壊した施設で

 前回の記事ではどん底を抜けた先のダルクでの人生の再出発について書きました。今日は施設移動した先でのダルクでの生活について書いていこうと思います。

 前回の記事で書いたダルクの責任者の仲間から「りおは時間がかかる。とことん付き合うから」「そうだ。ここがお前の家なんだよ」と言ってもらったにも関わらず今までいたダルクを僕は後にすることになります。「煮詰まってしまった」というそれだけの理由で。煮詰まっていても嫌な思いをしていても、それを抱えながら嫌な気持ちを持ちつつ続けて行くという大切さに気づくのはだいぶ後になってからのことです。

 そして新しいダルクでの生活が始まるのですが、そうやって環境を変えながら居場所を転々としてきたツケが回ってくることになります。合わないところからは距離を置いて環境を変えるのも大事なことですが「自分が変わらなければどこに行っても同じ」ということを思い知らされることになります。

 施設移動したダルクでの生活は初めはのんびりとしたものでした。でもある時からどうにもならない仲間とは呼べない人たちが施設に入ってきたのです。その人たちが施設を引っ掻き回し大暴れし施設は荒れ果てていました。薬を使わずに生活していた仲間は施設内でほんの僅かしかいませんでした。しかも蔓延していたのは覚せい剤です。そんな状態ですから回復の場としての機能は木っ端微塵に崩壊していました。僕も巻き込まれないはずはありません。淡々と自分の回復のプログラムをやるなどということはとても不可能でした。僕はそんな施設内で薬こそ使いませんでしたがプログラムをやる気を失っていました。やる気を出す以前の問題でダルクとしての機能が崩壊していましたから。「環境のせいにするな。自分のやるべきことをやれ」などという言葉はあの場にいた誰の心にも届かなかったはずです。

 そんな荒れ果てたダルクの中で僕も見事に巻き込まれ精神的に徐々に追い詰められ最後には発狂してしまうことになります。ガチの発狂です。ミーティングで行ったキリスト教会で大暴れし帰りの車中では全裸になりました。仲間の前で職員のアナルを掘らないと許されないんじゃないかという妄想に取り憑かれました。全裸になって仲間を呼び出し「一緒に地球を救おうぜ!」と叫びました。部屋から出ることが出来なくなり何も食べずに何日も過ごしました。精神的に追い詰めてきた奴を殴りました。周囲から耳を塞ぎノイズ音楽の中に居場所を求めました。ノイズが穏やかな音に変わった時、カーテンの隙間から光が降り注ぎました。涙が止まリませんでした。鉄格子に囲まれた鍵のかかる保護室で体験したことのない激痛と地獄を味わいました。この時の苦しみと地獄はどのように表現しても表しきれません。

 ダルクの創設者の近藤恒夫さんの指令で施設を引っ掻き回していた連中がいなくなりようやく施設が元に戻りました。ほとんどの仲間はいなくなり残ったのは数人だけでした。僕はそのダルクに三年いて奇跡的に円満に退寮することができました。そのダルクは山の上の隔離された施設だったので自立ができる東京のダルクに移りました。本当に血も涙も枯れ果てた地獄のようなダルクでした。

 ここまで書いてきた僕の表現は決して大袈裟なものではありません。それどころかここに書いた何十倍も現実は酷かったです。先に書いたように仲間と殴り合いの喧嘩もしました。支配とコントロールとパワーゲームの渦中でガチの発狂もしました。これは今までに居た全てのダルクでの生活に共通することですが、仲間の中にいて半分以上の時間は仲間との人間関係に囚われて滅入っていました。仲間仲間と言ってもそんなに美しいものでもないことも知っています。でも僕にはそれが必要だったのです。そこでやるしかありませんでした。綺麗で無菌な関係性の中では気づけなかったし回復もあり得ませんでした。

 そんな思いまでして何をお人好しなことを書いているんだと思われるかもしれませんが、そんな経験も決して無駄ではなかったし仲間のことも恨むことはできません。「恨みは感謝に変わる」などという綺麗事を言うつもりもありませんが、僕を回復させてくれたのはキラキラした体験や好きな仲間だけではありませんでした。仲間との間に起こることにはどんなことにも不思議な力が働いていて回復に繋がっていたのです。

 僕はこの記事を今ダルクで大変な思いをしている仲間に読んでもらいたいです。依存症者でなくても環境に悩まされ人間関係に悩まされ八方塞がりに感じている人たちに読んでもらいたいです。出口はある。僕はあの時の経験が糧になって今を生きています。苦しみの季節はあります。あなたは今、大切な季節を過ごしていること忘れないでください。

 トンネルの先の光。
 今は見えなくても…

 読んでいただきありがとうございました。

詩も書いているよ♡

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