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結局、自分本位。

全然noteを更新できていなかった谷津凜勇です。先日の最終報告会でのプレゼンテーションをもって、44期 ASHOKA Youth Ventureとしての1年間が終わりました。 Yoiをはじめお世話になった皆さま、ありがとうございました。引き続きよろしくお願いします。

ASHOKA Youth Venture最終報告会での集合写真

最終報告会は中間考査の直後だったためプレゼンが準備不足になってしまったので、改めてこの1年間の振り返りを文章にも残しておこうと思います。

Youth Ventureとは、世界最大・最古の社会起業家ネットワークASHOKAが、将来有望な若いチェンジメーカー(YVer)を発掘・育成する1年間のプログラムです。

ASHOKA YVer 認定

Ashoka Japanより44th Youth Ventureに認定されたのは、文化祭準備が佳境に入るはずだった去年の9月初めでした。コロナ感染者の急増に伴って文化祭の延期が決まり、少し時間ができたときに、 ちょうど今井 直人さんに誘われて、パネル審査会に参加させていただきました。

コロナ禍で臨時休校になった2020年の春に児童書紹介フリーペーパー「月あかり文庫」を創刊してから1年半。僕は「月あかり文庫」の規模の拡大に対応するためにNPO団体Dor til Dorをその年の春に発足させ、読書教育を推し進めていました。問題視していたのは、学校で従来行われてきた読書マラソンや読書感想文といった半強制的に本を読ませる形の読書教育です。


実は、それでは一向に子どもたちが自分から本を読む「自立した読者」に育たないことが明らかになっていて、高校入学後にそうした指導が無くなると途端に本から離れてしまう「高校生の読書クライシス」を解決しようと考えたのです。そこで、幼少期から4000冊の子どもの本を読み漁ってきた本の虫としての経験を生かして、そうした学校教育の限界を補完すべく、「自立した読者」を育てることをミッションに据えて、「月あかり文庫」をリスタートさせていました。


そうした「月あかり文庫」の活動が認められ、短時間の審査で満場一致でYVerに認定していただいたことはとても嬉しかったです。しかしながら、それ以上に、 渡辺周さんをはじめとする審査員の方々に「もっと大きなチャレンジをして、みんなが本好きになれる仕組みを作ってほしい。例えば、ヤンキーが道端で絵本読んでる、みたいな未来が実現したらめっちゃ面白くない?」と言われ、情熱を掻き立てられたのを覚えています。


活動の進展とモヤモヤ

その頃には、奥村印刷株式会社さんと協賛契約を結び、新たに加入したメンバーの役割分担も決まるなど、春に立ち上げた読書教育NPO団体 Dor til Dorも軌道に乗り始めていました。そこで、YVer認定を機に、フリーペーパー「月あかり文庫」の刷新に乗り出します。それまで趣味の延長で好きに書いていたのですが、改めて団体としてのユニークな活動として確立するために、ターゲットを「親や先生など子どもたちに本を手渡す立場の大人」と定め、本の意義・効果などに焦点を当てたおすすめ本の紹介を開始しました。さらに、活動の2つめの軸としてイベント開催を掲げました。


しかし、イベントの集客に苦労しただけでなく、「月あかり文庫」でも僕を含めメンバーの中に違和感が生まれ始めるなど、活動が行き詰まりをみるようになってしまったのです。そこで、冬にはオンライン合宿を開催し、メンバー全員で改めてそれぞれの読書経験やDor til Dorの活動と向き合う機会を作りました。そこで、読書の醍醐味や活動の役割を話し合う中で、Dor til Dorとして活動に臨むスタンスが見えてきます。「読書を楽しんできた『先輩』として、一緒に楽しみながら、子どもたちの未来に活きる読書体験を届ける​​」活動であると位置づけ、本への没頭を促すためにフリーペーパーを再始動させました。


こうしてYVer認定から数カ月をかけてDor til Dorの活動は定まっていったのですが、実は、僕自身は迷走を続けます。Dor til DorをNPO団体と名付けたことも相まって、YVerの同期・先輩と関わる中で、自分自身にも漠然と「社会貢献」を課すようになっていたのです。しかし、社会課題を解決するための事業プランを考えていても、なぜかしっくりこず、悶々としていました。


MAKERS U-18での気づき

MAKERS U-18での集合写真

そんな僕に転機が訪れたのは、NPO法人ETIC.が主催するMAKERS UNIVERSITY U-18という高校生向けのインキュベーションキャンプに参加したことがきっかけでした。 雑談の中で飛び出した、「社会課題の解決は活動の言い訳」という言葉がすっと胸に入ってきたのです。


そもそも振り返ってみれば、僕自身、活動を始めたのは決して「高校生の読書クライシス」という課題を解決するためではありませんでした。ただ単に、好きなことと得意なことを活かす臨時休校中の暇つぶし(笑)として始めたら、夢中で活動しているうちに広がっていったのです。MAKERS内でも、僕が徹夜して「子どものための銀行」のプロトタイプの開発に取り組んでしまったのは、「金融教育」という社会的な需要によるものではなく、ただ「子どもがクリエイターとして商品を販売するブランド」というこれまでにない斬新なビジョンに魅入られたからでした。


結局、自分本位。
自分がやりたいことをやるから没頭できて楽しいんだ。

僕にとっては、これがMAKERSでの一番の気づきです。すなわち、社会課題はあくまでも方向性を示すにすぎず、実際に行動を起こすには、社会課題を軸に物事を組み立てるのではなく、まず自分が本気でワクワクできるものでなければならない、と悟ったのです。実際、MAKERSがきっかけで相談させていただいた礒井純充さん(まちライブラリー提唱者)にも、「べき論で活動していても限界があるけど、楽しんでやっていればどんどん共感の輪が広がっていく」と応援していただきました。


心機一転

じゃあ、僕は、いったい何をやりたいんだろう……。考える中で腑に落ちたのは、「『読書の楽しさ』から広がる自分なりの読書教育を創り出す」という新しいミッションでした。「学校での読書教育の限界」「高校生の読書クライシス」「"なんとなく"で決まる進路選択」……確かに、このミッションの周辺には、ずっと抱いてきた僕の課題意識もあります。しかしながら、結局僕が一番ワクワクできるのは「自分にしかできない読書教育」という構想だったのです。

子ども文庫の日常

そこで、自分なりの読書教育を模索するために、まず飛び込んだのが「子ども文庫」でした。幼少期に4000冊の絵本・児童書を読み漁った小さな民間図書館に浸ることで、原点に立ち返ってみようと考えたのです。すると、この衰退しつつある「子ども文庫」を自分なりに何らかの形で復興させることができれば、自分だけの読書教育につながるのではないか、とも直感しました。

「1,000万円応援PROJECT」採択者プレゼンテーションの様子

そこで、新たにアウトプットの事業を立ち上げることを取りやめて、一旦、教育社会学研究としてインプットに集中することを決めます。運よく認定NPO法人大阪NPOセンターより助成金「1,000万円応援PROJECT」に採択され、210万円の研究費をいただけることになり、本格的に研究を始めました。

現在は一通り5万字の論文を書き上げ、検証中です。(もしご興味のある方がいれば、ぜひTwitter・Facebookからご連絡ください)こうして受験と並行で研究を続けていく中で、将来の生き方が少しずつ見えてきたように思います。それは、読書教育に対して起業家としての実践的なアプローチと研究者としての理論的なアプローチを両立させている将来像です。


最後に

こうしてYVerとしての1年間は過ぎていきました。認定されるまでは、とにかく猪突猛進で活動を広げる日々でしたが、この1年間は、一度立ち止まって、自分や団体とじっくり向き合う日々となりました。はじめは先輩方のようにYVerになったことをきっかけに「もっと大きな System's Change を起こすぞ!」と意気込んでいた僕ですが、結局、行ったり来たりしながらぐるぐる回って、自分の「心の声」に耳を傾けた「量より質」の1年間だったように感じます。当初予想していたものとは全く異なる日々ではありましたが、自分なりに充実した1年間を送ることができました。何度も相談に乗ってくださったYoiをはじめ、関わってくださったたくさんの皆様、ありがとうございました。

"社会起業家"ネットワークASHOKAに選ばれたのに、結局、「社会問題とかごちゃごちゃいう前に、自分がやりたいことやるんや! その結果社会に悪影響が出なければええやろ!」みたいな結論に至ってしまったのが、果たして良いことなのか分かりませんが(笑)、至ってしまったので仕方ないですね。これからも自分なりの読書教育を目指してもがき続けたいと思います。

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