死神のロウソクーたった1分で読める1分小説ー
「おまえが消してこい、このまぬけ野郎!」
死神の先輩達が、バクチをしながらドロロに命じた。ドロロは新人の死神だが少々にぶいため、いつも先輩達からいじめられていた。
「……あの部屋の場所は?」
「うるせえ、邪魔すんな。負けたらおまえから金取るぞ」
「すみません」
ドロロは飛び上がり、一目散に立ち去った。
「くそっ、僕が強くて賢かったらあいつらに一泡吹かせてやるのに」
ぶつぶつ言いながら巨大なビルの中に入った。迷いながらも目当ての部屋を探し当てる。そこにはたくさんのろうそくの火が燃え盛っていた。
これは命の火で、消えると死ぬ。寿命だと自然と消えるのだが、事故や災害などの場合、死神が消す必要がある。今から大きな事故があるのだ。
「ずいぶん太いろうそくだな。長生きできそうなのにかわいそうだなあ。なんまいだぶ、なんまいだぶ」
そう同情しながら、ドロロは十本ほどの火を消そうとした。しかし息を吹いても、水をかけても消えない。そこで消火器を使って消した。
どうにか仕事を終えて死神達の待機所に戻ると、ドロロはあっと驚愕の声を上げた。
死神の先輩達が、全員倒れて死んでいたのだ。
「どうしたんですか」
しゃがんで先輩に触れると、泡が付いていた。その感触と匂いでドロロは気づいた。
さっきの太いろうそくは、先輩達の命のろうそくだったのだ。この泡は消火器の泡なのだ。
ドロロは、ふふんと鼻を鳴らした。
「どうだ。一泡吹かせてやったぞ」
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コイモドリ 時をかける文学恋愛譚
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