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サービス開発とルールの関係

新サービスを考えている時に必ずぶち当たるのが法規制、国際標準、自主規制、社会規範などの「ルール」。まず「そもそも適法か?」を調べないとせっかく考えたことが無駄になってしまいますし、「社会規範に合うか?」を考えておかないとサービスをリリースした瞬間に炎上、サービス終了なんてことがありえます。
今回はいろいろなルールの中でも「法規制」について書いていきたいと思います。

事業を磨いていいく過程でもでてくるルールの壁。一例として以前関わっていた不動産系のサービスでは下記のようなことが関係していました。

・賃貸物件を紹介したら不動産業?
・転貸には宅地建物取引士の免許が必要?
・重要事項説明は対面でしないといけない?
・契約書は書面で提示しないといけない?
・複数の人から家賃を集めたら資金移動業?

だいたいはその道の専門家や法律家に聞く、判例を調べることで解消することが多いですが、新規性が高いサービスの場合はは「ルール自体が存在しない」ということもあります。

これは技術の進化によって、法律が決められた当時には想定されていなかったパターンが生じる、ということが発生するようになりました。このような「ルールの空白地帯」の対応は国によってスタンスに大きな違いがあります。

国ごとの法規制の違い

国によってルールの違いはありますが、今までにないサービスが出た時の、各国のスタンスに絞ってざっくり言うと・・

アメリカ:グレーゾーン=やってみて決める
日本:グレーゾーン=禁止
中国:ルールに関係なくやってみて決める

アメリカの場合
アメリカの「やってみて決める」という精神はフェアユース規定(米国著作権法107条)から見て取ることができます。
フェアユース規定とは他人の著作物を使用する際に、公正利用であれば著作権侵害とならない、というケースによって判断するべき、というグレーゾーンを含んだ規定です。
とりあえず公開して問題があれば取り下げる(オプトアウト)が可能なのもこのフェアユース規定があってこそのやり方です。

以下、イノベーション分野の司法について詳しい水野祐さんの著書から引用させていただきます。

米国は、現実の後追いしかできない法律に、フェアユース規定のような「余白」をプリセット(あらかじめ規定)することで、こうした新しい表現が 萎縮しないように、表現の自由が保護される「余白」を用意している。 このように、法に「余白」を埋め込んでおく技法は、安定した時代 においては人々の予測可能性を阻害するが、今のような高度情報化社会においては、新しい技術や表現を駆動する装置となりうる。また、フェアユースのような「余白」を持たせた法律の規定は、さまざまな分野で進むオンライン化に伴うアーキテクチャによる過度の制約に対し、柔軟性を確保するための有効な方策ともなりうる。そして、このことはアートに限らず、あらゆる分野において妥当するのではないだろうか。
法のデザイン/ 水野祐 著 / 株式会社フィルムアート社


中国の場合
中国ですごいスピードでサービスが生まれている背景としては、まずはやってみて、うまく行ったものに関してはルール自体も変えてしまう。その上でグローバルのルール(≒アメリカ)に沿う形で規制を作る、という流れになっています。

例えば、シェアバイクのofoは最初大学の構内からスタート、次に学校と学生のアパートの往復に拡大、次に街へと広げていった後(違法)、あまりにも数が多くなったので禁止するのではなく、追認という形で許可を与えました。

日本の場合
日本ではフェアユース規定のような、法律に余白をもつことはありませんし、OKかNGかは明文化するのが基本です。しかし、法律の壁が競争力を削ぐことのないよう、経済産業省により下記のような制度も運用されています。

この対照的とも言える国ごとのスタンスの違いは、背景として「コモン・ロー」「シビル・ロー」という大きく違う法律の概念があります。

コモン・ロー:先例主義。判例を中心とする法体系
イギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリア、インド等、旧大英帝国領であった国々で採用されていて別名「英米法」と呼ばれる
シビル・ロー:制定法を中心とする法体系
フランス、ドイツ等のヨーロッパ諸国、ブラジル、アルゼンチン等の南米諸国、中国、韓国等のアジア諸国で採用されていて別名「大陸法」と呼ばれる

こと細かに何がOKで何がNGかを定めるシビル・ローに対して、ルールは最小限で後は判例によって判断するというコモン・ロー。
Airbnb、UBERなど今までのルールを覆すようなサービスが次々と生まれるアメリカを見ていると、法律に空白を持ち、裁判所がルールを作っていくことが、今までにないサービスを作るには適しているように見えます。


ルールから生まれたサービス

ここまではサービスができてからルールが変わることについて紹介しましたが、反対に「ルールが変わってできた」サービスも多々あります。

規制が緩和されてできたケース:訪日外国人に対する観光ガイド
平成30年3月に通訳案内士法が改正され、訪日外国人に対する有償のガイドの資格が不要となりました。
https://huber.co.jp/
https://travee.co/
通訳案内士は英語の場合筆記試験免除となるのはTOEIC900点以上、他にもガイドの知識が必要な合格率2割の難関資格です。そのため登録者が2万人と、訪日外国人2860万人に対して圧倒的に人数が足りず、無資格のガイドなどが横行していました。

規制が強化されてできたケース:民泊用コンビニフロントデスク
民泊新法により、民泊の営業には届け出が必要になり、チェックイン時には名簿作成や本人確認が必須となりました。そのための鍵を受け渡すロッカーをコンビニで代行するサービスが始まりました。

ルールもしっかり見ていく

新サービスを考える時に、
・参入する市場のルールに適合するか?
・ルールがあったとしてそれは変える余地があるか?
・ルールを利用してサービスを作れないか?
など新しいこととルールは切っても切れない関係です。
また、技術の進化や、世の中の変化に合わせてルールも変わっていきます。サービスを磨いていく過程でアイデアの精度や顧客のことも重要ですが、ルールの動きもウォッチしていくこともおすすめです。



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