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'23.07.09 善光寺へ(後編)

朝、犬の鳴き声で目が覚める。
それも1匹、2匹ではない。何十頭もの犬の鳴き声。
近くにペットショップがあるらしい。
動物虐待かと思って心配しちゃったわ。

善光寺 

 5時30分、空一面の曇り空。
 善光寺への道のりは、犀川の川辺を走らせること約一時間。犀川はかなり曲がりくねった川だ。水流に削られ出来た崖、むせ返るような深い緑と、隠す霞はまさに水墨画の傑作。犀川はつづく雨で茶色く濁っていたが、しかしそれがかえって色彩の調和を保っていた。

 6時30分、善光寺に到着。
 参道はお土産屋や御飯処や宿屋が立ち並び、一つの町のよう。

善光寺への参道

 早朝だというのに参拝者が多い。どうやら、『お朝事』というお坊さんの朝のお勤めがあるらしい。お朝事は5時30分からだったようだ。残念。

 いよいよ善光寺境内へ。
 本堂は中に入ることができて、かなり広い。御本尊が安置される『瑠璃壇』の前には150畳の畳が敷かれており、江戸時代には信者がここで寝泊まりし、祈っていたそうである。
 畳にあがり、腰を下ろして、瞑想してみる。心が静まる。荘厳であり、緊張感があるが、決して息苦しくない。とても心地よい、不思議な場所。

 善光寺に来て感じたことは、本当の信仰が集まる場所だと感じた。
 ここの参拝者は、その所作や真剣さが他の寺院とは違う。
 長野のランドマークとして善光寺を訪れた私とは違う。
 だからこそ、また来たいと思った。

ー 善光寺についての豆知識 ー

 ここで善光寺について少し触れてみる。
 642年、天皇の勅願によって創建。無宗派の寺として知られ、性別や身分を問わない庶民に親しまれる寺である。奈良・平安時代の寺院は女性の立ち入りは許されなかった為、女性による善光寺信仰が盛んになった。
 ご本尊の『一光三尊阿弥陀如来像』は秘仏であり、住職ですら見たことはない。ボタン一つで地球の裏側の情報へ瞬時にアクセスできるこの時代。神秘に隠された仏像があるとは、なんともロマンティックである。

戸隠神社

  善光寺の北西、戸隠山の麓に戸隠神社はある。この神社は奥社・中社・宝光社・九頭龍社・火之御子社の五社からなり、天岩戸神話に由来することは神社の名前から容易に察することが出来る。
 戸隠神社とは、とても美しい名前だ。
 人の世から隠され、汚れのない神秘の神社。

 

戸隠神社 中社

御祭神 天八意思兼命

 急階段をえっちらおっちら上っていくと、突然現れたるは質素なお堂。
 質素ではあるが、とても美しい。
 
 境内には樹齢800年の三本杉があり、どれも佇まいが力強い。
 ところで、三本なんとかって多いよな、日光の三本松とか。日本三大○○とか。三って数字に何か意味でもあるのかな。興味深い。

そば処 奥社の茶屋

 長野県といえば、信州そば。これを食べずには帰れない。
 ということで戸隠神社 奥社の参道入り口前のお店へ。注文したのは「古流そば」。「古」って漢字がついていると、ついついロマンを感じて注文してしまう。だが、そんな中二病を絶望に落とす罠がある。「古流そば」は大根おろしと味噌で食べるのだ。そう、麵つゆが付いていないのだ。

麵つゆの代わりに大根おろし!

 しかし、私も歴戦の中二病。麵つゆをつけないのが「通の食べ方」、と言えばあら不思議、とてもカッコよくなるのだ。

 いざ実食。
 そばの香りというものを感じたことが無かったが、なるほどこういうことか。大根おろしをつけると、その清涼感で夏の暑さが吹き飛ぶ。味噌のかすかな塩味とまろやかさ、アクセントが欲しい時はすりおろした生姜にマスタード。最後にはやっぱり蕎麦湯。海苔の佃煮と柚子を入れるととても美味。
 おいしいけど最後はやっぱり、麺つゆが欲しくなったのでした。

 信州そばは長野県内でも地域によって違いがあるらしい。
 「信州そば巡りの旅」も面白そうだ。

戸隠神社 奥社 九頭龍社

 腹ごしらえも終え、最後の目的地へ。
 奥社と九頭龍社への参道は片道なんと2km。往復するだけで1時間はかかる。ここのご祭神は2柱。奥社が天手力雄命で、天岩戸を開いた神様であることから、スポーツ必勝などのご利益がある。九頭龍社は九頭龍大神で、奥社よりも歴史が古く、地主神として祭られている。
 入り口から1kmは道も整備され、歩きやす道が続く。途中、随神門を抜けるとそこからは圧巻の景色。樹齢400年を超える杉並木である。

 まるで御神木のみでできた並木道のよう。
 「ここは神域」だと直感する神社はあまりないが、ここはそれがあった。

 社でお参りをし、山道を引き返す途中、湧水と水神と書かれた祠があった。九頭龍大神は水の神様であり、この土地の最も古い神様であるはずだ。あまり人が来ない脇道に最も古い神様がいらっしゃるのが、なんだか寂しく感じるのであった。

旅の最後に

 長野から浜松への峠道。
 ワイパーは、ブンブン、ビュンビュンの最高速。だけども前は全く見えない。水浸しの急カーブは滑ったら崖を真っ逆さま。一番怖いのは土砂崩れ。九頭龍さまの不況を買うようなこと、何かやったかな。

 梅雨も最後の一仕事。
 もうすぐ夏がやってくる。

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