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【感想】アニメ『明日のナージャ』~ニチアサの隠れた名作~

こんにちは、唐梨です。
今日は『明日のナージャ』について書こうと思います。
それでは早速いってみましょう。



『明日のナージャ』とは

『おジャ魔女どれみ』と『プリキュア』の狭間で

2003年に放映された東映アニメーションの作品です。
いわゆるニチアサキッズタイムの作品。

孤児院で暮らす少女ナージャの元に、実は母親が生きているとの知らせが入り、様々な困難に巻き込まれながらも、母親との再会を目指し旅をしていく、というストーリーです。

2003年といえば、ちょうど何年にも渡ってシリーズ化された名作『おジャ魔女どれみ』と『プリキュア』の間に挟まれている年です。『おジャ魔女どれみ』はOVAも含めれば5年続き、『プリキュア』は2022年現在で19年目、しかも現在進行形でまだまだ続きそうという有様。

そんなロングセラー作品に挟まれた単年度作品なこと、またいわゆる玩具売上などの実績が振るわなかったこと、の2点の理由により知名度が低いのですが、ここで断言します。『明日のナージャ』は間違いなく名作です。2003年の作品ですが、今見てもまったく色褪せません。



きっかけは東映アニメーション様の無料公開

そう、なぜ「今見ても」と書いたかというと、東映アニメーション様が期間限定で毎週1話ずつ無料公開してくださっていたからなのです!!!

※残りわずかの限定公開ですが、まだ間に合うならば少しでも多くの方に見てほしいという気持ちでURL貼ります。

私は年齢的には『おジャ魔女どれみ』どストライク世代でして、ちょうど『明日のナージャ』が始まる頃には「え?ニチアサ見てるのなんて恥ずかしくない?」という自我が芽生えた頃でした。なので、ちょうどニチアサを卒業する過渡期の放映作品が『明日のナージャ』だったのですね。

まさかあの頃は、20年の時を経て大きいお友達として『デリシャスパーティ♡プリキュア』をTVerで毎週追いかける日が来るとは夢にも思わなかったな。笑

脱線しましたが、そんな理由で『明日のナージャ』はテレビをつけてたまたま放映していたら見るものの、途中からだからあまり身も入らず、という感じでほぼ未視聴。

そこへ来て今回の無料公開。大きいお友達となった今、変に年齢を気にするブロックもなくなっているので、受け入れ態勢はバッチリ!しかも、スタッフは『おジャ魔女どれみ』の方々が一部続投しているというではありませんか。あの名作『おジャ魔女どれみ』を完結させた後という円熟期の作品が『明日のナージャ』ってことは絶対見るしかないっ!

そんな思いで、つい先日の最終回まで毎週追いかけさせて頂きました。そしてやはり名作だと思ったのです。

なのに!!!名作なのに!!!知名度が低い!!!せっかく放送を見てこの感想を分かち合いたいと「明日のナージャ 感想」と検索しても、個人の感想サイトって上位1ページくらいしかヒットしないのです。だったら自分が書くしかない!この感動を記録に残しておきたい!と思っての今回の記事です。

かなり前置きが長くなってしまいましたが、そんな感想文、よろしければお付き合いくださいませ♡

※ネタバレ含むためご注意ください。



見どころ

大人こそ鑑賞に堪えうるストーリー

大きいお友達として見てみて思いましたが、ストーリーが大人向け。ニチアサキッズというより、むしろニチアサキッズの母親向けといってもいいくらい。誤解やすれ違いや嫉妬や憎しみを、割とリアリティ強めに描いています。子ども向けにありがちなご都合主義が比較的少ない。

ゆえに、作品のメッセージでもある「明日を信じて一所懸命に生きる」という言葉に重みがあります。
世知辛い世の中を知ってしまった大人にこそ、刺さるのではないでしょうか。



楽曲のすばらしさ

奥慶一さん手がける音楽がすばらしいです。作品舞台である1900年前後のヨーロッパに思いを馳せさせてくれます。なかでも『ワルツ No.5』が好きすぎて!!!切なく、幻想的で、ロマンティックな至高の一曲です。



細田守さん演出の第5話と第26話!!!!!!!!!!!!

もうね、この「!」の数がすべてを物語っています。第5話はフランシス、第26話はキースとのロマンス回なのですが、前後のストーリーなんて知らなくても、この第5話と第26話だけでもいいから単独で見てほしいくらいに価値がある。YouTube無料公開のコメント欄で、どなたかが「短編映画を見ているよう」と書かれていましたが、本当にその通りだなと思います。

それもそのはず、なんてったって演出があの細田守さんなのです。細田守さんの映画監督作品ももちろん素敵なのですが、私はそれ以上に細田守さんが演出を手がけた外部の通常アニメ回が好きで。

『おジャ魔女どれみドッカ~ン!』第40話『どれみと魔女をやめた魔女』然り。

『デジモンアドベンチャー』第21話『コロモン東京大激突!』然り。

通常アニメは様々な演出家さんが代わりばんこで担当しますから、相対的に細田守さんの凄さが浮き彫りになるんですよね(もちろん他の演出家さんも素晴らしいことは言わずもがなです)。「演出の影響ってこんなに大きいんだ!」「演出家ってすごいお仕事なんだ!」としみじみ思わせてくれます。

なので、そんな細田守さんが演出を担うと知り、磐石の信頼で拝聴した第5話と第26話。

結論、期待以上でした。光と影を駆使したカメラワーク、珠玉の一言に尽きます。しかもまた挿入歌が『ワルツ No.5』なのですよ。「奥慶一さんの至高の一曲 × 細田守さんの珠玉の演出」の相乗効果で極上の逸品となっております。




キャラデザがどタイプ

個人的にキャラデザがとっても好み。特に主人公のナージャ!『おジャ魔女どれみ』ほどデフォルメされているわけでもなく、『プリキュア』ほど現代的なわけでもなく、昭和の少女漫画っぽさがミックスされた可愛らしいデザインだな~と思います。



ヨーロッパに行きたくなる風景描写

舞台が1900年前後のヨーロッパということで、ヨーロッパの風景描写がとても魅力的です。なんといっても特筆すべきはスペインのグラナダとイタリアのローマ!!!歴史的名所がちりばめられていて、旅行雑誌を見ているかのように、現地へのあこがれが膨らみます。



登場人物語り

最後に登場人物について語ります。あくまで私が印象に残ったキャラクターになるので、全員ではないのですが、どれも魅力的なキャラクターばかりです。


ナージャ

本作の主人公。今となっては人気声優、小清水亜美さんのデビュー作のキャラでもあります。小清水さんの声が本当にナージャにぴったり。

金髪碧眼の美少女です。しかし、儚げな薄幸の病弱な美少女ではなく、明るく天真爛漫で元気で喜怒哀楽が顔に出るタイプの美少女です。それゆえか、行く先々で数多の男性にモテまくり、同時に何人かの女性を図らずも敵に回してもいます。

が、見ていてそりゃモテるよなぁと納得してしまう説得力があるのです。だって、これだけ素直で行動力があって、人の気持ちに寄り添えて、怒っている時ははっきりそう言うし、間違っていたと思えば謝るし、まっすぐで、その場にいるだけで周りを明るくさせる華がある。
外見が美少女なだけでなく、内面も美少女なのです。

ストーリーの都合上、男性モテのシーンが多く描かれていますが、男性モテというより人類モテしているタイプですね。見た目は可愛らしく、中身は勇ましく、女の子かくありたし、と思える魅力的な主人公です。


ローズマリー

ナージャの孤児院時代の幼馴染。もはや彼女なしに『明日のナージャ』を語ることはできないのではないか、というくらい鮮烈な印象を残したキャラクター。

ナージャと同じくらい美少女なのですが、性格は正反対。ここまで徹頭徹尾、徹底的に悪役を貫き通すことができるって、一周まわって逆に尊敬の念さえ浮かぶほど。その根性にあっぱれの拍手を送りたくなります。しかも声優さんが宍戸留美さんだからか、勝手に瀬川おんぷちゃんの小悪魔さが脳内リンクされて、ますます魅力的な悪役に。

『明日のナージャ』視聴中の私のツイートも、ほぼローズマリーのことばかりになっていた気が。笑

自分の欲求に正直な点、自分大好きすぎる点、下手な小悪党よりよっぽど肝が据わっている点、自分なりのポリシーがある点などなど、その方向性はさておき、メンタルは見習うべきところばかりだなと思うのです。


メリーアン

フランシスに想いを寄せるも叶わなかった幼馴染。メリーアンこそ、視聴時の年齢によって印象が変わるキャラクターなのではないでしょうか。

たぶんニチアサ対象年齢の時に見ても、意地悪なお姉さんとしか思わなかったと思います。でも、アラサーになって見ると、メリーアンの恋のつらさや惨めさがすごく分かる。きっとフランシスが絡まなければ、普段はいい人なんだろうなと。女の嫌な部分をあえて体現してくれている、そんなキャラクター。


コレット

ナージャの母親。オーストリアの超名門貴族プレミンジャー家の出身。この母にしてあの娘あり、と予想に違わぬ金髪碧眼の美人さん。

そして、おっとりした喋りとおしとやかな所作に似合わぬ、なかなかぶっとんだ行動力をお持ちの方。そもそもナージャが生まれたのも、身分違いの恋をして駆け落ちしたからですし。夫とナージャと死別して(ナージャの場合は死別したと思い込まされて)プレミンジャー家に戻ってからも相変わらずで、旅行中にお忍びで抜け出しちゃうし。

でも一番すごいのは、幸せに再婚しており、かつ周囲の方々から愛されているという点。だって経歴だけ見たら「平民と駆け落ちして貴族の家柄に泥を塗り、バツイチ子持ちになった女」じゃないですか。それでも周囲の人望を集めているということは、コレットの人柄によるところが大きいのだろうなと。

確かにコレットもナージャの母親だけあって魅力が似ているんですよね。悪気はなくて、純真無垢で、自分の気持ちに正直で、ちょっとやそっとじゃ動じない胆力があって、物事の本質をとらえる力が高い。何がはずしちゃいけない点で、何が些末事な点なのか、よく分かっている。

コレット・ナージャ母娘に共通しているのは「貴族だろうが平民だろうが、結局は自分の人生は自分次第!迷ったら己の行動あるのみ!」「たとえ運命の神様がダメって言っても、自分でどうにかするっきゃない!だって自分の人生だもの!」という思想。

ゆえに、コレットの父でありナージャの祖父であるプレミンジャー公爵は、自我の強い二人に手を焼き悩まされるわけですが、時は1900年頃。あと50年もすれば第一次世界大戦はおろか、第二次世界大戦も終わっているのです。それくらい急激なパラダイムシフトが近い将来に起こるのです。そう思えば、お人形みたいな深窓の令嬢より、よっぽど素敵な自慢のレディに二人とも育っていますし、むしろ時代を先取りしすぎた母娘だったと言えましょう。

ということで、なかなかに人たらしなお母様だと思います。この方も人類モテタイプですね。


ジュリエッタ

ナージャがイタリアで出会った貴族のお嬢さん。ほとんど登場回はないのですが、少ない登場シーンながら印象に残るセリフを発していた方なので取り上げさせて頂きました。

「私を好きな人ではなくて、私が好きな人を選んだ」的な意味のセリフだったのですが、これって大人になるほど心に刺さります。変に打算や世間体や年齢を気にしてしまうと、がんじがらめになって本音がわからなくなったりすることもありますが、そんな時に思い出したいセリフ。


フランシス

イギリスの貴族ハーコート家の双子の弟。優しくて、上品で、穏やかで、責任感もあって、絵に描いたような理想の王子様像を体現しています。白い衣装に白馬がめちゃくちゃ様になるタイプ。

高い理想を描き、それに向かって正々堂々と努力しますが、時にそれが貴族のお坊ちゃんゆえの甘えと揶揄される原因にも。

とはいえ「貴族とか平民とか身分なんて関係ない」という信念は、最初から最後までいつ何時でも変わらず、強い想いを持った人物です。地位も名声も何もかも手に入れ、もっとも恵まれているように見えて、実は時代(貴族の没落やお家事情や財政難など)の流れに翻弄された苦労人ポジションかも。

絵に描いた王子様像の裏側に見え隠れする、等身大の人間臭さが、フランシスの最大の魅力だと思います。


キース

イギリスの貴族ハーコート家の双子の兄。そして怪盗黒バラの正体。容姿こそフランシスと瓜二つですが、中身は対照的。口が悪い、野性的、アウトローも厭わない、などなかなか現実主義者。

ですが、現実主義な思考回路や手段で理想を達成しようとしているだけで、求めている理想そのものは実はフランシスと一緒。ここがすれ違っていたことが、二人の仲違いの原因だったので、最後は和解できて良かったです。

そんなキースは、目的のためには手段を選ばないゆえに、幾度となくナージャのピンチを救ってくれています。アウトローなポジションだからこそ為せる技。そうなんですよ、実は行動面で王子様っぽいことをしているのはキースなんですよね。この点、フランシスとは正反対です。

王子様っぽい雰囲気と、人間臭い中身のフランシス。粗野な雰囲気と、ピンチを救うヒーロー王子体質のキース。白と黒、光と影、陰と陽、この二人はどこまでも対照的です。


ハービー

怪盗黒バラを追いかける新聞記者。「母親に再会できるきっかけづくり」において一番ナージャの助けになったのでは、というくらい、機転が利いて仕事ができる。

自分なりの信念と、事件が起きると分かるやヨーロッパ中を飛び回る行動力、まさに知的肉体労働なジャーナリズムの鑑。

その信念も「怪盗黒バラの悪事を暴く」というより「怪盗黒バラはあくどい金持ちしか狙わない義賊のようだから、盗まれた先の被害者の悪事を世に知らせる」「かつ、黒バラがなぜそのような行動をとるのか真意を知る」という、大変かっこいいものです。金持ちの悪い部分を新聞に載せちゃうわけですから、まぁ危ない目にも何度か遇ったようなのですが、それでも曲げない。

ラストのキースとの男の友情も素敵。全編通して何かとおいしいポジションの、渋カッコいいお兄さんです。



新世紀の女の子として

『明日のナージャ』で印象的なセリフに、第49話でローズマリーが言う

「ナージャ、私たちは新しい時代に、20世紀に生きてるのよ」

と、第50話でハービーが言う

「それでこそ新世紀の女の子だ」

があります。

『明日のナージャ』の舞台設定が1900年頃であること、また『明日のナージャ』の放映年が2003年であることを踏まえると、これってリアルタイム視聴者層に向けた「21世紀を生きる新世紀の女の子へ」というメッセージだと思うのです。世紀末にこの世に生を受け、新世紀に自分の未来に向かって動くお年頃になる、そんな女の子。

20世紀だろうが、21世紀だろうが、いつの世も「新しい時代の世代交代」の本質は変わらない。そのオマージュとして『明日のナージャ』はあるのではないか、そう思うのです。

そして時は過ぎ、早2022年。ぎりぎりリアルタイム視聴者層だった、新世紀を生きる女の子の一人として、私も明日を信じて今日を最大限生きます。

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