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【ショートエッセイ】おじいさんは小鳥の姿になって・・・

我が家は山の中にある。
だから野鳥も多い。

ウグイス、メジロ、ホトトギス、ヒヨドリ、モズ、シジュウガラ、それに招かねざるカラス・・・。

我が家の人たちは庭に舞い降りた小鳥を見る度に言う。
"おじいさんが来た"

おじいさんとはぼくの父のことだ。
ここでは父のことをおじいさんと呼ぶ。

おじいさんはすでに他界している。
小鳥が好きで、鳥籠に入れて飼っていた。

ぼくが子供の頃は、いろいろな小鳥が家の中にいた。
10羽くらいいただろうか。
文鳥も飼っていたかな。

毎日、毎日、小鳥たちのえさを取り替えていたことを覚えている。
日曜日は鳥籠の掃除。
竹製の鳥籠を器用に分解していた。

狭い鳥籠に閉じ込められて、小鳥が可哀想だから逃がしてやったら、とお袋は何度も忠告していた。
しかしおじいさんは全く聞く耳を持たなかった。
何十年も小鳥を取っ替え引っ替えして飼い続けていた。

今から思えば、どれだけ小鳥が好きだったのだろうかと思う。

ぼくの家族はおじいさんと同居していたから、そのことを知っている。
"おじいさんと言えば小鳥"
そんなイメージが頭の中に定着していまっているのだろう。

亡くなってから10年以上にもなるが、今でもそのイメージは根付いている。
そのイメージが、"おじいさんが小鳥の姿を借りて我が家に戻ってきた"という発想になるのだろう。

皆が小鳥を見るたびに"おじいさんが来た"って普通に言うから、ぼくもそんな気持ちになってしまう。

いつの間にか家のニ階の窓から、小鳥をずっと眺めてしまうようになった。

小説を読んでいただきありがとうございます。鈴々堂プロジェクトに興味を持ってサポートいただけましたらうれしいです。夫婦で夢をかなえる一歩にしたいです。よろしくお願いします。