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【連続note小説】日向食堂 小日向真司37歳

たまの定休日。
真司は幸次を連れて公園へ散歩に出掛けた。
真司の手にはボムボール。
いつかのあの日のように。

6歳の幸次が投げるボールは、どこに飛んで来るかわかららない。
いつでも右に左に動けるように準備が必要だ。
それでも上げる姿が愛くるしい。

幸次にボールを投げる時は、ノーバウンドでは絶対に捕れない。
そうだからと言って、コロコロと地面を転がしたら、幸次は面白くないと言ってすぐに止めてしまう
2バンド、3バンドくらいで幸次の手元に届くような、絶妙な投球が必要になる。

どちらも実に面倒臭い。
そんなことを我が子のためなら何の苦痛とも思わない。
それが親というものなのか、真司はしみじみと思った。

父・誠司とキャッチボールをしたあの日。
父は同じ気持ちだったのだろうか。
こんなに面倒臭いことに付き合ってくれていたのか。

「幸次、キャッチボール、楽しいか」
「楽しいよ」
何気ない親子の会話だ。
でもこの会話、この時をずっと覚えておいてほしい。
真司は父親になって、やっと自分の父親の気持ちが理解できたような気がした。


▼関連エピソードはこちら


真司が生まれてから人生を全うするまでを連載小説として描いていきます。

<続く…>

<前回のお話はこちら>

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