【連続note小説】日向食堂 小日向真司60歳
まだプロ野球のシーズン中なのに、本田がふらっと日向食堂に現れた。
「オヤジさんの顔を見に来ましたよ」
「そうかい、ゆっくりしていけよ」
本田は注文した大盛りのメンチカツ定食を美味そうに食べていた。
本田は現役選手として、すでにベテランの域に差し掛かかっていた。
打率は下がり、試合に出場する機会も減っていた。
真司:「慣れ親しんだ世界から別の世界に飛び込むのは勇気がいったよ。
でもなぁ、家族と仲間が助けてくれて、何とかここまで来れた。
おまえだって一人じゃないんだぞ」
本田:「何ですか、藪から棒に、それっていつのことなんですか」
真司:「この店を始める時だ。
まぁ、やらないと食っていけないって事情があったからな」
本田:「オヤジさん、何でぼくがここに来たのかお見通しですね」
真司:「そりゃ、高校生の時から見てるからな」
本田:「オヤジさんのメシを食ったら、覚悟ができました」
真司:「そうかい、明日からまた毎日メシを食いに来い」
本田:「はいっ!」
真司:「やせっぽちのおまえがよく頑張ったなあ。
おまえはおれの誇りだ。
もう休んでいいんだぞ」
本田は声をあげて泣いた。
その翌日、本田は現役からの引退を宣言した。
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<続く…>
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※伏線回収 小日向真司51歳、42歳
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