海風 りん

21.7.27~ ショートショート、短編小説を書いています。好きな作家さん 星新一さ…

海風 りん

21.7.27~ ショートショート、短編小説を書いています。好きな作家さん 星新一さん 村上春樹さん 「創作物語コンテスト2002」佳作入賞

最近の記事

鏡をみつめて(#髪を染めた日 with ホーユー参加作品)

母はとても器用な人だった。 大人になった今、思い返すと、ずいぶんオシャレな人でもあった。 記憶の中の母は、いつも明るいレッドブラウンの髪色だ。 私はとても遅く生まれた子だ。兄を産んだときですら、昭和の時代には遅めの子どもであった。 そして、さらに七つ年下の私。 きっと予想外の子どもだったのだろう。母に冗談ぽく聞いてみたいが、それは叶わない。今の母は認知症を患っていて、娘である私を認識することはおろか、言葉を発することもできない。 若い頃の母が髪を染めるのは、休みの日の台所であ

    • 本音

      「この日あいてる?」 久しぶりの連絡 2月14日を指定され 最初に浮かんだ気持ちは めんどくさい……

      • すべてを君に

        君が傷つくやり方 心をえぐる言葉 さわられたくない場所 ぜんぶわかってる だから 僕はそれを選んで 愛を伝えるんだ

        • その手で触れて 好きって言って 伝えてしまえば 陳腐な言葉

        鏡をみつめて(#髪を染めた日 with ホーユー参加作品)

          『勇者の乗り物』(#掌編小説#ショートショート)

          朝、ホームに立ち、空を見上げる。 青空の日はもちろん、どんよりと曇った日や大雨の日でさえその習慣は変わらない。 ネクタイの息苦しさも、肩にかかるカバンの重さも全て忘れて、空に浮かんでいるような気持ちになっていく。この時間が好きだ。 やがて、銀色の電車がゴーゴーと音を立ててやってきた。 サービス業であるため、始発に近い時間。それでも、そこそこ混んでいる電車。私も含め日本人は勤勉だ。 数分も走ると電車は地下へと吸い込まれていく。 闇がせり上がり、建物が消え、最後に空が飲み込まれた

          『勇者の乗り物』(#掌編小説#ショートショート)

          『優しい世界』(#掌編小説#ショートショート)

           人前で泣いたことある?  終電近い地下鉄の車内、声を殺しポトポトと涙を流しながら、誰に向けたでもない問いかけをした。  人前で泣いたことなんか……ある……  いつも一緒に馬鹿笑いしている友人の結婚式。涙をこらえながらご両親への手紙を読む姿をみて、花嫁より泣いてしまった。  恋人とみた映画。クライマックスは字幕が読めないくらい視界が涙で滲んだ。興奮冷めやらぬ状態で喫茶店に入り、「泣くか喋るかどっちかにしなよ」と笑われながら、ラストについて語りあった。  泣き虫な私。だから……

          『優しい世界』(#掌編小説#ショートショート)

          『同じ景色』(#掌編小説#ショートショート)

          「今日は電車に乗ろうね」 小さな手を握りながら、桜並木が続く川沿いの道をのんびりと歩く。 家を出る前は、ベビーカーに乗せるか少し迷った。でも、ぴょんぴょんと跳ねながら、嬉しそうに歩く息子をみていると、歩きにしてよかったと思う。 桜の蕾がほころびはじめ、可憐なピンク色と青空のコントラストが眩しい。 「お花きれいだね。これからどんどん咲くよ」 のんびりと話しかける。 「うん。きれい!」 息子は嬉しそうに言ったが、視線はすれ違った散歩中の犬に釘付けだった。みてないじゃないと苦笑

          『同じ景色』(#掌編小説#ショートショート)

          『1分シマウマ』(#毎週ショートショートnote)

          「君はシマウマの気持ちになったことあるかい?」 「なによ、それ。あるわけないじゃない」 「ではまず、シマウマの気持ちを知ることから始めよう。今から君はシマウマだ。いいかい?」 「何言ってんの?いやよ」 「えええ。そんな取りつくしまもない」 「ビックリするあなたにビックリするわ」 「そこをなんとか!!1分だけ!1分!ね!ね!」 「そんな必死にならなくても……」 「はい!君は今からシマウマです!ここはサバンナの草原、そよぐ風。君は仲間とともに草を食んでいる……」 「なしくずしに始

          『1分シマウマ』(#毎週ショートショートnote)

          灯り

          持ち寄った灯りが 大きな炎になり 漆黒の森を照らす 輪になり火を囲み 赤く照らされた顔は 優しく笑っていた 今、火を落とし 歩きだす旅人 心に灯りを携えて

          『最高のおとも』(#ショートショート#短編小説)

          むかしむかし、大福くんとみたらし団子ちゃんが仲良く暮らしていました。 大福くんは口下手だけど、どっしりあんこで、優しくみたらし団子ちゃんに話しかけました。 みたらし団子ちゃんはお転婆だけど、とろーり香ばしいみつでおしゃれして、いつもニコニコ笑ってました。 ある日、大福くんがいいました。 「俺らにはやっぱりお茶だよな」 和菓子のお供にはお茶が一番。 わかりきっているからこその質問です。 「そうよね。私たちにはお茶よね」 みたらし団子ちゃんのそんな声が聞きたくて、大福くんは聞いた

          『最高のおとも』(#ショートショート#短編小説)

          深海魚

          光ない水の底 祈る深海魚 この身体が壊れても 光を風を空を 感じることが できますように

          『悪友』(#短編小説#ショートショート)

          「お前さぁ。いつまで年齢=彼女いない歴、更新し続けるわけ?俺たちもう29だぜ。魔法使いになれるまで、一年きってるぞ」 悪友が、友情と優越感をまぜた目でこちらを覗き込む。 酔っ払い特有のあけすけな表情。眼も顔も赤くなって、ゆでだこみたいだ。 「うるせーな。お前みたいに経験人数さえ増えりゃいいってもんでもないだろう? 今度の彼女……ええと、美紀ちゃんだっけ?あれ、あゆみちゃんか?これがほんとの純恋だ!ってのたまいてただろう?うまくいってるのかよ」 俺は、ビールをあおりながら、話題

          『悪友』(#短編小説#ショートショート)

          私にふれて 好きっていって 伝えてしまえば 陳腐な言葉

          「創作物語コンテスト2022」にて、佳作をいただきました!

          皆様!こんにちは! この度、ショートショート『ひろって』が、「創作物語コンテスト2022」(standfMシアター様主催)にて、佳作に選ばれました✨ 『ひろって』の全文はこちらです↓↓ぜひ感想などいただけると嬉しいです! 田舎の一本道の風景や、ここに出てくる登場人物たちのイメージはずっと私の中にあって、それを物語にできたとき、とても嬉しくワクワクしたのを覚えています。 こうして選んでいただけて、物語をつくる楽しみと、それを面白いと思ってもらえる喜びを感じることを感じるこ

          「創作物語コンテスト2022」にて、佳作をいただきました!

          海風りんのちょっとだけ地獄の話

          皆さま。こんにちは! この度はミカエル観光の一日天国ツアーにご参加いただきまして、誠にありがとうございます。 本日のツアーガイドを務めさせていただきます。天使です。 一生懸命務めさせていただきます。よろしくお願い致します。 ……盛大な拍手ありがとうございます。 早速ですが、このツアー参加はじめてだよーっていう方いらっしゃいますか? はい。今回は初めての方が多いですね。 このツアーは三途の川を渡れそうで渡れない、人間の寿命と医療技術のせめぎあいのなかで、迷ってる方々を対象に組ん

          海風りんのちょっとだけ地獄の話

          『結婚式ゾンビ』(#毎週ショートショートnote)

          僕はとてもとても幸せだよ。 明日は君と僕の結婚式。 可愛くて綺麗な君の、最高の笑顔がみたいから、今夜は早めにベッドに入ろうね。 僕は君の傍らに腰掛け、微笑んだ。 君の身体は細くて白くて、抱きしめたら折れてしまいそうだ。 そんな君が欲しくて、僕はときどき衝動を抑えきれずに、欲望を君にぶつけてしまう。 ごめんね。こんなに愛しているのに……いや、愛しているからこそ、そうせずにはいられないんだ。 男ってどうしようもないね。いつも優しく受け止めてくれてありがとう。 でも、今夜はそんなこ

          『結婚式ゾンビ』(#毎週ショートショートnote)