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『1分シマウマ』(#毎週ショートショートnote)

「君はシマウマの気持ちになったことあるかい?」
「なによ、それ。あるわけないじゃない」
「ではまず、シマウマの気持ちを知ることから始めよう。今から君はシマウマだ。いいかい?」
「何言ってんの?いやよ」
「えええ。そんな取りつくしまもない」
「ビックリするあなたにビックリするわ」
「そこをなんとか!!1分だけ!1分!ね!ね!」
「そんな必死にならなくても……」
「はい!君は今からシマウマです!ここはサバンナの草原、そよぐ風。君は仲間とともに草を食んでいる……」
「なしくずしに始まってる……」
「そこに一匹のヒョウが現れる。草のそよぎの中に身を潜め、君を狙う鋭い眼」
「なんで私なのよ」
「そう、ヒョウは君にしか興味がない。群れの中には、年老いたシマウマも子どものシマウマもいるのに、凛々しいヒョウは君だけを狙っている」
「ずいぶんヒョウに肩入れしてるわね」
「君はまだ身にせまる危険に気が付いていない。草の味をかみしめ、風を感じてるだけ……。どう?ゾクゾクしてこない?」
「んんーん。特には……」
「そしてついに、ヒョウが君の首元に牙を向ける!!!!」
「!!!ちょっと、なに勢いで抱き着いてくるのよ!やめなさい!」
「僕は君を狙うヒョウなのだ!今日こそ君を仕留める!」
「あほか!!」
「……いってえ!ええ?ダメだった?」
「もちろんダメ。そんなんで、喜ぶ女いないわよ」
「そうかなぁ。捕食される極限の恐怖が、圧倒的な快感と興奮を誘うと思うのだけど」
「なに言ってるんだか」
「じゃあさ。今度はライオンの気持ちになってみようよ」
「いやよ」
「僕というか弱きシマウマをものにして。ね。お願い」
「……さてはこっちが本来の目的でしょ。でもそれなら1分といわず楽しめそうね」

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